利益剰余金とは|計算方法、マイナスの意味、内部留保との違い

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利益剰余金とは、会社が設立以来稼いできた利益の累積額から配当や積立金などに使われた分を差し引いて残った金額のことで、貸借対照表の「株主資本」に計上されます。利益剰余金がプラスなら健全経営、マイナスなら累積赤字を意味し、会社の財務体力を一目で判断できる重要な指標です。

本記事では、利益剰余金の定義と内部留保との違い、構成要素(利益準備金・任意積立金・繰越利益剰余金)、5つの使い道、計算方法と増減要因、配当・処分の仕訳方法までをわかりやすく解説します。

1.利益剰余金とは?

利益剰余金とは、会社が設立以来稼いだ利益のうち、配当や積立金に使われず社内に留保されている累積額のことで、貸借対照表では株主資本の一部として計上されます。

会計では株主資本の一部となり、自己株式や資本金、資本剰余金を除いたものが該当します。

利益剰余金は2つの資金の合算で、1つは内部で保持される利益の「利益準備金」、もう1つは「任意積立金」と「繰越利益剰余金」が含まれる「その他利益剰余金」です。

利益剰余金が多ければ財務状況が良好な会社となるため、利益剰余金は会社の財務状況示す重要な指標になります。

内部留保との関係

利益剰余金は、会社の内部に蓄積された金額という意味合いから「内部留保」と呼ばれる場合もあります。

しかし内部留保という言葉は正式な会計用語ではないため、決算書では一切使われません。会社が利益を内部留保して蓄積した結果が、利益剰余金として計上されるのです。


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2.利益剰余金を構成する要素

利益剰余金は「利益準備金(会社法で積立が義務付けられた法定積立金)」「任意積立金(会社が任意で積み立てる内部留保)」「繰越利益剰余金(使途未定のまま累積した利益)」の3つで構成されます。

構成要素 内容 積立の根拠 具体例
利益準備金 配当金の1/10以上を積み立てる法定積立金 会社法で義務付け 配当100万円なら10万円以上を積立
任意積立金 会社が任意に設定する目的別の積立金 株主総会の決議 退職給付積立金、配当積立金
繰越利益剰余金 使途を決めずに累積した利益の残額 計算上自動的に発生 当期純利益から配当・積立を差し引いた残り

①利益準備金

会社法により義務付けられている法定積立金のこと。株主への配当は会社で発生した利益から行います。その際、配当金は利益剰余金に計上しなければなりません。

そのため配当金の1/10にあたる金額を、資本準備金か利益準備金で確保しておくことが定められているのです。

②任意積立金

内部留保として積み立てる利益のうち会社法に規定されていないもの。前述した「その他利益剰余金」にあたるもので、「退職給付積立金」「配当積立金」が該当します。これらは目的積立金と特段用途を設定していない無目的積立金となります。

③繰越利益剰余金

特定した使途を設定せずに累積した内部留保金のこと。利益剰余金のなかで、利益準備金と任意積立金以外に分類されるものを指します。利益の累積額に当期の純利益(または純損失)を加算した額です。

以前は「繰越利益」あるいは「未処分利益」と呼ばれていました。しかし2006年会社法施行にて、繰越利益剰余金の名称で統一されたのです。

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3.利益剰余金・資本剰余金・資本金の比較表

3つはどれも「株主資本」の構成要素ですが、利益から生まれたお金か、出資から生まれたお金かで大きく異なります。以下の表で違いを確認しましょう。

項目 利益剰余金 資本剰余金 資本金
定義 会社が稼いだ利益の累積額から配当等を差し引いた残額 株主からの出資額のうち資本金に組み入れなかった額 株主が会社に出資した金額のうち資本金として計上した額
源泉 事業活動で得た利益 株主からの払込(出資) 株主からの払込(出資)
BS上の分類 株主資本 → 利益剰余金 株主資本 → 資本剰余金 株主資本 → 資本金
構成要素 利益準備金+その他利益剰余金(任意積立金・繰越利益剰余金) 資本準備金+その他資本剰余金
法的な積立義務 配当時に配当額の1/10を利益準備金として積立 株式発行時に払込額の1/2を超えない額を資本準備金として積立 株式発行時に払込額の1/2以上を資本金に組入
配当への影響 繰越利益剰余金が配当の主な原資 その他資本剰余金からも配当可能(ただし実務上は少ない) 直接配当の原資にはならない
マイナスの意味 累積赤字(債務超過リスク) 通常マイナスにはならない 減資しない限り変動しない
経営判断への示唆 多いほど財務基盤が強固(ただし現金とは別) 出資による資金調達力を示す 法人税率の基準(1億円超で軽減税率不適用)や外形標準課税の適用判定に影響
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4.利益剰余金の使い道

利益剰余金の使い道は、株主配当・設備投資・資本組み入れ・賃金引き上げ・企業買収の5つがあり、会社の成長と株主還元を両立させるための原資となります。

使い道 目的 メリット 注意点
株主配当 株主への利益還元 株主満足度向上、株価維持 過剰配当は財務基盤を弱体化させる
設備投資 事業の維持・成長 生産性向上、資産形成 法定耐用年数に基づく減価償却が必要
資本組み入れ 株式発行なしでの増資 新株発行による希薄化を回避 資本金1億円超で税率アップ等の不利益
賃金引き上げ 従業員の処遇改善 人材確保、モチベーション向上 全員配分では一人あたりの恩恵が薄い
企業買収 事業規模の拡大 ノウハウ取得、シナジー効果 買収後のPMI(統合プロセス)が必要

①株主配当

会社が得た利益を株主に還元する金額を株主配当といい、この株主配当に利益余剰金が使われます。利益余剰金が当初計画よりも多くなった場合、増配の形で配当の上積みをする、あるいは株主優待の拡充などで還元する場合もあります。

②設備投資

利益剰余金は会社の設備投資にも使われます。たとえば工場や店舗などの建設や機械の購入、IT化のためのソフトウェアやシステムなどの費用です。購入したものは資産となり、法定耐用年数にもとづいて減価償却します。

③資本組み入れ

資本組み入れとは、利益剰余金のなかの任意積立金を活用した増資方法のこと。会社が増資する方法には株式の発行があります。

しかし「株式をこれ以上発行したくない」「そもそも上場していない」場合、この方法は使えません。そのような場合でも、利益剰余金を資本金に振り替えて増資できるのです。

資本組み入れをする際の注意点

資本組み入れを行う際、会計上の資本金が1億円を超えないよう注意が必要です。

1億円を超えてしまうと、「法人税の軽減税率が適用されなくなり、税率が15%から23.2%にアップする」「外形標準課税が適用される」「交際費課税の定額控除や少額減価償却資産の特例が受けられなくなる」など、税務上で不利になってしまいます。

④賃金引き上げ

利益剰余金を従業員の賃金引き上げに当てるのも可能です。しかし剰余金を全従業員に充当した場合、一人ひとりの賃金増加額は少額となるため、それほどの恩恵にならないかもしれません。

そのため業績の向上を目的とした設備投資や、危機管理として内部留保とする経営者が多いようです。

⑤企業買収

利益剰余金を会社買収資金に使う場合もあります。会社の規模拡大や業績向上を実現する際、社内で設備投資をして人材を育成すると膨大な時間を要するでしょう。利益剰余金を活用して会社買収を実施すれば、それらの時間を大幅に短縮できるのです。

また他社のノウハウや風土を受け入れると、より新たな強みを生み出すようなシナジー効果も期待できます。

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5.利益剰余金の計算方法

利益剰余金の計算式は「繰越利益剰余金+当期純利益」で、繰越利益剰余金は「(当期純利益+前期繰越利益)−配当額−利益準備金−別途積立金」で算出します。

▼利益剰余金の計算例

項目 金額
当期純利益 500万円
前期からの繰越利益 1,000万円
株主配当金 100万円
利益準備金積立 10万円
別途積立金 50万円
繰越利益剰余金 1,340万円(500+1,000−100−10−50)
利益剰余金合計 繰越利益剰余金+利益準備金+任意積立金の合計

▼利益剰余金の増減要因

増減 要因 具体的な状況
増加 経営業績が黒字 当期純利益が出ており、健全な経営を継続
増加 欠損てん補 資本金を充当してマイナスを埋める振替処理(純資産自体は変動しない)
減少 経営業績が赤字 損失を利益剰余金で補てんし、残高が減少
減少 過剰配当 株主への配当が利益を上回り、繰越利益剰余金が目減り

当期の業績から生み出された利益剰余金は、株主総会を経て確定されます。利益剰余金の計算方法や数字の見方などについて、解説しましょう。

計算方法

利益剰余金の計算式は、「蓄積された利益(繰越利益剰余金)+当期の利益」。

繰越利益剰余金とは、前期より繰り越された利益の蓄積額と当期の純利益を合算した金額で、「(当期純利益+繰越利益)-配当額-利益準備金-別途積立金」で計算します。なお利益剰余金の計算結果がマイナスになる場合もあります。

利益剰余金の数字でわかること

利益剰余金からは、いわば会社の健康状態を読み解けます。利益剰余金とは会社が毎年稼いだ利益の累計額です。

利益剰余金が減っていれば、会社の運営資金として利益ではなく資本金を使っていることになります。そのため利益剰余金がマイナスという状況は、赤字が続いている危険な状態を示しているのです。

利益剰余金の増加要因

利益剰余金が増加する要因には、利益が出ている点も挙げられます。また資本金をその他資本剰余金へ組み入れた場合も利益剰余金が増加するのです。しかし増加したように見えるだけで資産自体が増えたわけではありません。

経営業績が黒字

当期純利益が出る、すなわち経営業績が黒字になると利益剰余金が増加します。資本を追加投資しても業績が悪化しているような状況では、思うように利益につながらないでしょう。

利益剰余金が増加していれば、健全な経営をしている安全性が高い会社といえるのです。

欠損てん補

欠損てん補とは、業績が悪化した場合には利益剰余金が目減りしてマイナスに陥った際、資本金を充当してマイナスを埋めること。欠損てん補は純資産内の振替処理なので、純資産自体は損益計算書上で減少しません。

たとえば株主への配当金を創出する目的で、欠損てん補を行う場合があります。

利益剰余金の減少要因

利益剰余金は会社の状況によって増加する場合もあれば減少する場合もあります。利益剰余金が減少する要因は、赤字経営と過剰な株式配当です。いずれにせよ利益剰余金が減少している会社は、経営に問題があるといえるでしょう。

経営業績が赤字

経営業績の赤字とは、利益よりも損失が大きくなっている状況です。当期で赤字決算となってしまった場合、損失を利益剰余金で補てんすると利益剰余金が減少します。

利益剰余金のマイナスが資本金を超過した場合は債務超過と呼ばれる状況になり、会社存亡の危機を意味するのです。

過剰配当

株主への配当金は利益剰余金が使われるため、繰越利益剰余金を減少させるのです。なお配当に使える利益剰余金は資本金4分の1までと定められています。株主の過剰な配当要求を会社がそのまま受け入れてしまうと、利益剰余金がどんどん減少してしまうからです。

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6.利益剰余金の配当と処分について

利益剰余金の配当は財産の社外流出、処分は社内での用途変更として扱われ、いずれも繰越利益剰余金を取り崩して仕訳します。

利益剰余金の配当の扱い

利益剰余金での配当は財産の社外流出、処分は内部留保として扱われます。配当の支払いは繰越利益剰余金を取り崩して支払うためです。一方、処分で得た設備は、形や勘定項目は変わるものの会社の資産として計上されます。

利益剰余金の配当と処分の仕訳

黒字経営が続いて利益が出ると、利益剰余金から配当額や利益準備金、別途積立金を差し引いて繰越利益剰余金が生じます。株主配当金や利益準備金などに使われるのが、この繰越利益剰余金です。

たとえば株主配当金として100万円を計上する場合の仕訳を見てみましょう。純資産が100万円減少し、未払い配当金として負債が100万円増加します。

利益剰余金の仕訳にはクラウド会計ソフトが便利

利益剰余金などの仕訳は複雑なので、クラウド会計ソフトの利用をおすすめします。利益剰余金を始めとした会計や経理の処理は、会社内でも非常に時間と手間のかかる作業です。

クラウド会計ソフトでは、日々の売上や経費などが自動計上されるため、業務効率が各段にアップするでしょう。さらにクラウド上にデータを蓄積できるので、会計や経理業務をテレワークで行えるようになります。

よくある質問

利益剰余金がマイナスになるとどうなりますか?

利益剰余金がマイナスということは、会社が設立以来稼いだ利益の累計よりも損失の累計が大きい状態を意味します。直ちに倒産するわけではありませんが、資金繰りの悪化や信用力の低下につながります。さらに、マイナスの額が資本金を超過すると「債務超過」となり、銀行からの融資が困難になるなど、会社存続の危機を示す深刻な状態です。欠損てん補(資本金の取り崩し)で帳簿上のマイナスを解消する方法もありますが、根本的には黒字経営に転換して利益を積み上げることが必要です。

利益剰余金と内部留保は同じ意味ですか?

一般的には同義として使われることが多いですが、厳密には異なります。利益剰余金は会社法・会計基準に基づく正式な勘定科目で、貸借対照表の株主資本の部に計上されます。一方、内部留保は正式な会計用語ではなく、「会社内部に蓄積された利益」を指す通称です。決算書や有価証券報告書では「内部留保」という表記は使われず、すべて「利益剰余金」として表示されます。

利益剰余金が多い会社は現金も多いのですか?

必ずしもそうとは限りません。利益剰余金は貸借対照表の純資産(右側)に計上される数字であり、その資金がどのような資産に変わっているかは別の問題です。たとえば利益剰余金が10億円あっても、その大部分が設備投資や不動産取得に使われていれば、手元の現金預金はわずかという場合もあります。会社の手元資金を確認するには、貸借対照表の資産の部にある「現金及び預金」の項目を見る必要があります。


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◆資料内容抜粋 (全31ページ)
・人事評価システム「カオナビ」とは?
・人事のお悩み別 活用事例9選
・専任サポートについて   など