#30-2 「誰と働くかが大事だから人柄を前面に出す」ショーケース”らしい”採用スタンス(後編)
株式会社ショーケース
阪急阪神マーケティングソリューションズ株式会社
| エンゲージメント局 総務人事セクション 部長
深田 浩嗣さん
2022.07.25
社風が大きく異なる広告代理店とデザイン会社が統合して誕生した、阪急阪神マーケティングソリューションズ。統合直後、それぞれの会社の価値観が反映された2つの人事制度を一つにまとめあげるという大仕事を成し遂げたのが、深田さんです。常に勉強が必要で正解のない人事の難しさを「面白味」だと語り、キャリアの初めから数多くのチャレンジに挑んできました。前編では、人事に興味を持ったきっかけから、パナソニック、Amazon、楽天で培った幅広い人事経験に迫ります。
【後編では、深田さんが取り組んだ人事施策やカオナビの活用法について紹介します】
PROFILE
深田 浩嗣
阪急阪神マーケティングソリューションズ株式会社
大学で公法学、大学院で総合政策学を専攻し、卒業後アクセンチュアに入社。SEを経験するが、人事の仕事を志して転職。パナソニック、Amazon、楽天で人事業務全般、さらにHRBPなどを担当。国内メーカーや外資系企業といった多様な環境で、本社から子会社、新拠点など拠点の大小にかかわらず、さまざまな経験を積んだのち、広告代理店とデザイン会社が統合してできたばかりの阪急阪神マーケティングソリューションズに入社。同社の人事制度の統一に大きく貢献した。
大学や大学院では法律を学ばれていたんですね。
「もともと、弁護士になりたかったんですよ。正義感が強く、知的でカッコいい弁護士が主人公のドラマを見たのがきっかけです。それで大学では公法学、大学院では総合政策を専攻したのですが、勉強していくなかで狭く深く真理を追究する法律に関連する仕事だけではなく、もっと広くいろいろな会社を見てみたいと思ったんです。それで、多くのクライアントに関われるコンサルティングファームを志望しました」
そこで、新卒ではアクセンチュアに入社されたと?
「はい。人事コンサルタントを希望していましたが、実際に配属されたのはSEで、企業のERPの導入支援や、プログラミングを経験しました。それでも人事の仕事への憧れが強く、転職することにしたんです」
人事の仕事は、どんなところに興味を持ったんですか?
「一日中パソコンで細かい作業をするSEはあまり向いてないなと感じ、自分のキャリアを模索する中で、いろいろな仕事について調べたんです。そこで人事の仕事も調べて、年々変わる法律やガイドラインなど、国や自治体のルールを理解する必要があることを知りました。つまり、勉強し続けないといけない仕事。さらに人が相手なので、SEとは異なり、ロジックが必ずしもあるわけではなく、正解も完成もない。だからこそ追求しがいがありますよね。この2つのポイントで人事に魅力を感じたんです。小学生の頃から、『広辞苑』を始めから読むぐらい知識欲が強く、知識がどんどん増えていくのがすごく嬉しかったんです。だから、社会人になっても勉強したいとは思っていたんですよね。その勉強が、さらに仕事に役立つなら一番いい。法律の勉強がダイレクトにつながるのは法務ですが、人と直接かかわるほうが面白味があると思い、人事を目指しました」
正解がある部分とそうでない部分、この両方があるからこそ人事は面白いということですね。
「そうですね。『ヒト・モノ・カネ・情報』などを経営資源と言いますが、企業にとってのヒトとは、社員だけではなく、その後ろにいる家族やお取引先などの関係者も含むと思うのです。そんな多くの皆さんの生活を支える仕事が人事。そういう意味でも、とても意義のある仕事だと感じています」
そして、次のパナソニックの物流子会社に人事として転職されたんですね。初めはどんな業務を担当したんですか?
「入社した当時は本社で採用・研修、さらに人事企画や労働組合対応を担当しました。その後、関西全域を管轄する支店の人事部に異動し、労務や労基署監査対応、人事中期計画の作成、子会社の吸収合併に伴う手続きや総務、安全衛生も担当しました。工場や倉庫の現場を起点とし、入社から退職までのライフサイクルを俯瞰して、人事・総務業務全般を経験できましたね」
未経験で入社されて、かなり幅広く人事業務を経験されたんですね!思い描いていた人事像とギャップはありませんでしたか?
「ギャップで言うと、人事には2つの顔があることを知りました。一つは、会社説明会や面接、研修などでみなさんと直接会う顔。それが私が思っていた人事のイメージでした。でも実はもっと奥に、戦略人事や経営人事と呼ばれる第2の顔があって、ほかの社員からは見えないところでたくさんの仕事をしているんです。会社の事業戦略を理解していないとできませんし、経営に直接影響する仕事ですから、奥が深い。まずは社員のみなさんと直接話して信頼関係を築いた上で戦略人事を行う、第2の顔もあるんですよ」
次のAmazonには、なぜ転職しようと思ったんですか?
「当時、Amazonが日本でも台頭してきた頃で、大阪の堺に日本で2番目の倉庫(FC:Fulfillment Center)を作るために物流と人事両方の経験がある人材を探している、と知人から声がかかり、リファラルで転職しました。倉庫内のほとんどが機械化されていて、従来の物流のイメージとはまったく異なることに衝撃を受けたんです。在庫がない本を買うときに、書店に注文してから受取まで1~2週間かかっていたものが、日本中どこでも注文してから1~2日で自宅に届くという新しいビジネスモデル。これから、すごく伸びるだろうなと思いました。とはいえ、いざ入社してみると、経験豊富な先輩に教わりながら仕事を覚える、なんて環境ではなく…(笑)。本社との要員計画の調整から採用、労務トラブル対応、レクリエーションイベント実施まで、堺の倉庫に在籍する約200名の人事に関わる仕事を一人でなんでもこなす、HRBP(HRビジネスパートナー)という職種でした。難易度の高いチャレンジが続き、総合力が試される職場だったおかげで成長の機会を得ることができました。拠点責任者との接点が多く、経営幹部の目線を知ることができたのも、大きな経験でしたね」
その経験を買われて、次の楽天には転職されたと?
「Amazonに追いつけ追い越せで、楽天が物流事業に乗り出した頃でした。倉庫のノウハウを求められ、こちらもまたリファラル転職でした(笑)。配属は本社のグローバル人事部と、物流子会社の人事企画マネージャーとの兼任。物流子会社の経営幹部人材から倉庫の作業者まで、上下の幅が広い階層の人材を採用するタスクがあり、結構苦労しましたね…。例えば、倉庫の機械化にあたって日本で初めて導入する機械を稼働させるために、それを扱えるエンジニアを外資系企業や設備メーカーからスカウトしました。楽天は英語公用語化も進めているところだったので、子会社の社員全員がTOEICを受けていただくように仕組み作りもしました。TOEICスコアが800点ないと、昇給が制限される制度があったので、サポートが必須だったんですよ」
話を聞いているだけでも、大変そうな業務です…。一方で深田さんは難しい課題ほど、仕事への充実感が出てきそうですね。
「うーん…正直に言うと、難しいことをやりたいわけではないんですよ…。ただ誰もほかにやる人がいないし、でも誰かがやらないと事業運営に大きな支障が出る…ということで、私がやらざるを得ない環境だったんですよね(笑)。とはいえ、もともと学ぶことは好きですし、さまざまな他部署の上司にも、いろんな会社から転職して来ている同僚たちにも助けていただきました。人に恵まれたからこそ、乗り越えられたと思います」
そこから、関西に根ざした阪急阪神マーケティングソリューションズへと転職されたんですね。
「私自身が大阪出身ということもあり、関西の雰囲気が好きなんです。その関西で大きなブランド価値があり、地域に貢献できる企業で働きたいと思いました。関西を代表するブランドである『阪急阪神』を体現する企業の人事の仕事に、意義があるのではないかと感じたんです」
入社してまずは、何に取り組まれたんですか?
「入社した当初、求められていた仕事のメインは統合したばかりの会社の人事制度統一でした。鉄道や不動産などの事業を展開する阪急阪神ホールディングスのグループ会社『阪急アドエージェンシー』と、老舗百貨店をコアにするエイチ・ツー・オー リテイリングのグループ会社『阪急デザインシステムズ』、2社が統合してできたばかりの会社。広告代理店の機能を持つ会社と、広告媒体などのデザイン制作を行う会社、それぞれの強みを活かした統合でしたが、社風も文化も大きく異なりました。当時の阪急アドエージェンシーは年功序列をベースに、男性はスーツ姿が基本。一方の阪急デザインシステムズは服装もカジュアルで平均年齢も若く、フラットな雰囲気。そんな2社の人事制度統一から始めたんです」
後編では、社風が異なる会社の人事制度統一から、深田さんが取り組んだ人事施策について詳しく話を聞いていきます。
社名 | 阪急阪神マーケティングソリューションズ株式会社 |
---|---|
設立 | 2019年12月 |
事業内容 | 各種広告媒体の企画・販売、広告戦略立案・企画、デジタルマーケティング |
従業員数 | 268名(2022年4月時点) |
会社HP | https://hhms.co.jp |
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PROFILE
深田 浩嗣
阪急阪神マーケティングソリューションズ株式会社
大学で公法学、大学院で総合政策学を専攻し、卒業後アクセンチュアに入社。SEを経験するが、人事の仕事を志して転職。パナソニック、Amazon、楽天で人事業務全般、さらにHRBPなどを担当。国内メーカーや外資系企業といった多様な環境で、本社から子会社、新拠点など拠点の大小にかかわらず、さまざまな経験を積んだのち、広告代理店とデザイン会社が統合してできたばかりの阪急阪神マーケティングソリューションズに入社。同社の人事制度の統一に大きく貢献した。
#30-2 「誰と働くかが大事だから人柄を前面に出す」ショーケース”らしい”採用スタンス(後編)
株式会社ショーケース
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阪急阪神マーケティングソリューションズ株式会社
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