選択肢を広げることで社員の自律を促す。HEROZ人事の基本方針(後編)

HEROZ株式会社
 | HR Division, Division Head

桑原 孝典さん

2022.06.27

大手グループの人事部長という安定した地位を手放してAIベンチャーに移った理由を、「まだまだ成長したかったからこそ、真逆の環境に行きたかった」と話す桑原さん。後編では、そんな桑原さんが人材業界を離れて転職しようと思った経緯や、HEROZでゼロベースから立ち上げた人事の話を詳しく聞いていきます。
【前編はこちらから】

PROFILE

桑原 孝典

HEROZ株式会社

大学卒業後、パーソルテンプスタッフ(旧テンプスタッフ)に入社。営業、営業企画、新規事業責任者、BPO事業立ち上げ・コンサル部門・運用部門の管掌を歴任。その後、パーソルホールディングス(旧テンプホールディングス社)に異動。人事企画部長・人事労務部長・人事管理部長を兼務・歴任し、グループ共通施策の推進に取り組む。2020年にHEROZに転職し、人事部門の立ち上げを行う。

「まだまだ成長したい」大きな仕事をやりきった後に芽生えた想い

パーソルホールディングスの人事部長をしている中で、そこからHEROZへと転職を考えたきっかけはあったんですか?

「各グループ会社の人事基盤を統合するプロジェクトが完了し、大きな仕事が終わったことで、まずはやりきった感があったんですよ。人事部長という肩書もあり、部下もその頃には100名ぐらいになっていました。恵まれた立場にはありましたが、みんなぼくよりも優秀なので、自分じゃないといけない仕事は結構限られているとも思っていました。これから先、恵まれた地位にあぐらをかいて居座っていると、きっと自分はダメになる…。まだまだ成長していたかったんです。自社では通用するけれど、他の会社で通用するのか?、試してみたかったですね。自分は一度も転職したことがないし(笑)。それで、これまでの地位は捨ててまったく別の環境に行ってみたいと思ったんです。大きい会社から小さい会社へ、これから人事部門をつくるような会社へ行こうと決めました。そう決心すると、すぐに動き始めて、すぐに転職していましたね」

あえてハードな道を選んだわけですね。

「紹介してもらって何社か候補があったなかで、一番課題が多いところを選んだ結果、決めたのがHEROZでした(笑)。まだ規模が小さくて人事というハッキリしたポジションもなく、まったくのゼロベースから作らなきゃいけない状態。逆に言うと土台づくりから関われるところが魅力的だと感じました。HEROZも組織を大きくしていく中で、いろいろ見直さなければいけない転換期だと思いましたし、ちょうどコロナ禍に入ったこともあり、新たな課題も山積みだったんですよね」

スライド20枚でプレゼンするも、「チャットで良いよ」というスピード感に驚く

HEROZに入社された後、それまでと勝手が違いすぎてつまずくことはなかったですか?

「うーん…信頼して任せてもらえる状況もあり、割と自分の考える通りに実行できたので、つまづくことはなかったですね。ぼくが入社した頃のHEROZの人事はノウハウが蓄積されているわけではないですし、仕組み化もされていなかった。それが今となっては良かったと思っていて。ほぼゼロベースで、一通りの人事の仕組みづくりを手掛けました。とはいえ、会社規模がまったく異なるため、前職の知識をそのまま転用はもちろんできません。ただ、基本的な考え方、フレームワークなどはこれまでの経験が役立ちましたね。ぼくともう一人で人事部の土台から作り始め、2年かけて体制を整えて、いまは人事担当も増えたことでようやく人事部っぽくなってきました」

前職との違いで驚くようなことはありましたか?

「入社して初めての役員を含む会議で、人事ポリシーから人事戦略、人事施策の計画まで、パワーポイント20枚ぐらいの資料をつくってがっつりプレゼンをしたんです。そうしたら『これ、チャットでいいよ』って言われた(笑)。多くの人にわかりやすく図示化してちゃんと資料つくってプレゼンして、なんてことを求めていない会社なんです。それよりもスピード重視。会議もあまりすることなく、オンライン上で共有し、チャットで『いいね』がついたらそれで合意とみなす。『それでいいの?』って最初こそ戸惑いましたが、今はもうすっかり慣れて、HEROZにフィットしたやり方だと思っています」

仕事の進め方自体、ずいぶんと違ったんですね!

「そうですね。前職で異動したときなどもそうでしたが、環境や求められるものが変わったときに、その変化に適応できるかどうかは、生死を分けるほど重要なポイントだと思っているんです。だから無駄に時間をかけすぎないHEROZのやり方に、いま適応できたのは、ぼくとしてはすごく良かった。いまの時代、世の中はものすごい早いスピードで変化していますから、『PDCAサイクルをまわして』とか『会議でプレゼンして書面で合議を』とか言っていると致命的になってしまうこともある。元々、少なからずスピード重視の考え方がぼく自身の中にもあったのも、HEROZの環境に適応していくのは、あまり難しいことではなかったですね」

課題はAI人材の採用。解決のためにとにかく「応募数を上げる」

転職されてみて、具体的にどんなことが人事課題でしたか?

大きな課題は採用でした。事業の起点だと思っていて、売上高にも影響する一番インパクトの大きな課題だと思っています。AI関連固有のコア技術を持っており、そこから幅広い産業に応用していこう、AI革命を起こそうというのがHEROZですから、エンジニアの採用はとても重要なんです。とはいえ、AI関連の技術に強みを持つ人材の確保は競争率が高く、どうしても大手企業などとの争奪戦になってしまうんですよね」

争奪戦に勝つために、どういった対策を行っているんですか?

「まず、入口として応募数を上げることに注力しています。応募してくれさえしたら、社内には業界内でも知名度のあるエンジニアや技術力があるエンジニアがいるので、彼らが口説いてくれる。エンジニアって、高い技術を持つ人に憧れてその人の近くに行きたい、技術を磨くために相談や切磋琢磨し成長したいという志向があるので。その点、HEROZには強みがある、勝ち筋があると思っています。知名度がまだまだ高い会社ではありませんが、AI技術に興味のある人にとってはまあまあ認知されているんですよね。この認知度をもっと上げていきたいと思っています。そのためにメディア露出を増やしたり、イベントを企画したりもしていますし、SNSにも力を入れているところです。採用担当者には、2022年度の目標は『全員がフォロワー1万人にしなさい』とまで、言っていますよ。ひとたびバズれば認知度は一気に増える可能性がある。それを無料でできるのは、すごく良い時代ですよね」

「選択肢の多さ」が社員のエンゲージメント向上につながる

採用以外はどうですか?

働き方も大きな課題の一つですね。コロナ禍で一気にリモート化、デジタル化が進んでいますが、まだまだ当たり前というわけではなく、いまだに転換期ですよね。リモートワークではコミュニケーションの質が下がるから『出社させたほうがいい』という考えもあるし、どちらでも変わらないという考えもある。ぼく自身はそんなの一律・一概にはどっちがいいとかは言えないと思っています。日々のタスクによってどちらが適しているかは変わるし、個人の価値観や子育て・介護など、置かれている状況によっても良し悪しは変わる。大切なのは、社員一人一人が自分自身でその日のタスクを考えながら、一番適切な選択肢を自分で考え判断できることだと思っています。なので、HEROZではどっちが良いとかではなく、自分の働き方は自分で選ぶことに重点を置いているとも言えます」

個人の自律に寄るところが大きいというわけですね。

「HEROZの経営陣でもリモート派もリアル派もいますが、業種的にもデジタルツールを駆使し、働き方も最先端でいたいという方針です。ぼく自身もリモート・リアルに関係なく、デジタルツールなど便利な先端技術はとことん享受したい。でないと、いまの時代、あっという間に世の中自体が変わってしまいますから(笑)」

企業や業界によって、リモートワークへの対応などは差が大きいですよね。

「はい。あとは、それぞれの価値観や自宅環境も大きく影響しますよね。家族が多くて集中しにくいからオフィスに出社したほうが良い人もいれば、遠くから通勤する時間を仕事に充てたほうが作業も捗るし、疲れない人もいる。完全にリモート化などしたら、せっかく会社の近くに家を買ったのに意味がないという人だっている。さらにいえば、日々のタスクによってもどちらが良いかは変わる。ここで大事なのは、選択肢の多さです。自律的に自分で考え、どちらが適しているのかを選べることこそが社員のエンゲージメントを高めるのだと信じています」

エンゲージメントという言葉が出てきたということで、HEROZではカオナビの『パルスサーベイ』で社員のコンディション把握も行っていると聞きました。

「はい。在宅勤務の状況を見てみると、社員の約95%がリモートワークをしているのですが、どうしても社員の満足度や心身の健康など、見えなくなってしまう部分はあります。オフィスで対面のコミュニケーションが取れていれば自然と把握できる情報がわからなくなってしまうのは、リモートワークの欠点かもしれません。ただ、それを補う方法はあるとは思っていて、その一つが『パルスサーベイ』の導入だと考えています」

社員の行動を邪魔しないため、人事が作るルールは最小限に抑える

カオナビを使い、評価方法の見直しも行っているようですね。

「評価確定までの工数が多すぎるということで面談の工程を減らしたり、チャットやスプレッドシートを活用したり、とカオナビの導入で負荷を下げられた部分もあります。以前はメールなどでバラバラに評価連絡をしていたり、ファイルも分散していたところが、カオナビで一元管理できるようになったのは進化ですね。やりかたを見直して半年運用してみて、不具合があったら都度変更、というように、半期に一度はマイナーチェンジするなど、いろいろと模索しているところです」

ありがとうございます。最後に今後、人事として取り組んでいきたい施策はありますか?

「施策というか、方針ならお話できます。HEROZの経営理念として『世界を驚かすサービスを創出する』ということを掲げており、我々独自のAIコア技術で、あらゆる産業に新しい未来をもたらしていきたいという目標があるんです。会社の基盤を整え、今後はいよいよ新しいプロダクトの開発・リリースにもとりかかる段階。それにあたっては採用するポジションも多様化するでしょうし、当然社内の価値観も段々と多様になっていく。そうしたら人事の仕組みもガラッと変えることもあるかもしれません。あくまでも人事は、経営理念や事業を支える存在だとすると、社内ルールが足かせになってしまってはいけない時代の先を読んで先手を打つことに注力し、社員がどうしたらさらに活躍できるかを常に考えなければいけないと考えています」

会社として目指すべき未来に向かうために、人事はどういった貢献ができると考えていますか?

「どれだけ優れたサービスもプロダクトも、人が創っている以上、人がすべて。企業の取り組みのすべては、人事が基盤になると考えて、打ち手を講じていく。採用もそうですし、人材開発もそうですし、エンゲージメントもそうです。全ての起点は「人」にあると考え、人事は貢献していきたいですね。とはいえ、新しい施策をどんどん試すというより、人事が講じる仕組みやルールは最小限で済ませたい。わかりやすい例で言うと、先ほどの出社かリモートワークかという働き方のルールも、出社義務だけなくしました。これが例えば週●日出社や職種・等級で区分するなど、こちらから細かいルールを提示してしまうと、社員が自律的に考え、行動するのを妨げる要因になってしまうと考えたためです。究極、人事制度があることすら意識せずに、社員が自律的に行動しているムードを創れたら最高の人事なんだな、と考えています」

編集後記

もともと「クリエイティブな仕事をしたい」という想いから始まり、「成長し続けたい」という気持ちが芽生えて、HEROZに転職した桑原さん。自ら創ることが好きだからこそ、グループ会社の人事制度統一や、HEROZ転職後の仕組み構築など、正解がないと言われる人事の仕事にも果敢に挑戦し、成果をあげてきたのだと思います。そして、「人事制度があることすら意識しないような環境」など、人事はあくまでも事業や社員の成長のためという俯瞰的な視点こそが、桑原さんの行動指針になっているのでしょう。

会社概要

社名 HEROZ株式会社
設立 2009年4月
事業内容 AI技術を活用したサービスの企画・開発・運用
従業員数 65名(2022年6月時点)
会社HP
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大学卒業後、パーソルテンプスタッフ(旧テンプスタッフ)に入社。営業、営業企画、新規事業責任者、BPO事業立ち上げ・コンサル部門・運用部門の管掌を歴任。その後、パーソルホールディングス(旧テンプホールディングス社)に異動。人事企画部長・人事労務部長・人事管理部長を兼務・歴任し、グループ共通施策の推進に取り組む。2020年にHEROZに転職し、人事部門の立ち上げを行う。

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『人事のヨコガオ』は、人事の方の「個性」にフォーカスしたメディアです。「社員一人ひとりの個性と向き合う人事の方個人にも個性がある」というコンセプトのもと、人事就任から現在に至る過程でぶつかった壁やその裏にある想いなど、等身大の姿を取材します。 気になる他社の人事の方が、どんな想いで施策に取り組み、これまでどう壁を乗り越えてきたのか。あまり知られていない”ヨコガオ”をお届けすることで、人事の方同士が学び合えるきっかけを提供していきます。