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人事制度改革のゴールは、従業員全員が 「タビオで働きたいワケ」を語れること

タビオ株式会社
 | 人事部 部長

小泉 秀之さん

Interview

2019.03.28

メイド・イン・ジャパンの高品質な靴下を企画・販売しているタビオでは、契約社員やアルバイトに至るまで満足度を上げられるよう、人事制度改革を進めている最中だという。なぜそれほどまでに従業員を大切にするのかを含め、同社の取り組みについてお話を伺った。

PROFILE

小泉 秀之

タビオ株式会社

有名ホテルに勤務の後、1996年にタビオ株式会社(当時、株式会社ダン)へ入社。同社の海外進出に伴い、ロンドンその他の出店計画や海外店舗の運営管理を担当。2013年より現職に異動し、人事戦略を担当するように。現在は人事制度改革や働き方改革などに取り組んでいる。

会社の魅力のひとつはなんといってもこだわりの商品

タビオさんといえば、駅ビルなどでよく見かける“靴下屋”を手がけてらっしゃる会社ですよね?

「はい、靴下専業メーカーで、国内には3ブランド270店舗ほど展開しています」

小泉さんは新卒で入社されたのですか?

「入社が1996年なんですけれども、前職はホテルマンだったんです。当時ホテルをテーマにしたコミックやドラマが流行していて、ホスピタリティを追求したいなと……。縁あって弊社に入社しましたが、それまでは靴下のくの字も知りませんでした(笑)」

入社当時はどんなお仕事をされてらしたんですか?

「ちょうど会社が海外進出を狙った時期で、当時の取締役とともに40日間ほど欧米を巡り、その後海外事業担当者として出店・運営管理を担うようになりました。2002年ロンドンへ海外1号店を出店し、約8年間のロンドン駐在を含め2013年まで海外部門を担当していました。その頃から今でも、いかに自社製品の良さを広めるかを模索しています。

弊社の靴下は1足1,000円程度と決して安くはない。でも靴下へのこだわりは世界一のレベルです。どういう人物に、どういうシーンで履いていただくか。地位やライフスタイルを踏まえてストーリーをとことん考え、商品開発しています。素材、光沢、形などあらゆる見栄えを考慮し、かつ快適さや耐久性のバランスも取らなくてはいけない。そんなこだわりや良さを、どうお伝えすればお客様に響くのかな、と」

良いものを作るだけでなく、多くの方に届けたいという熱意を感じます。

「弊社の靴下は、最後に会長が履き心地を試します。お客様は靴下を店頭で手にとり1~2秒の間に判断される。そんな瞬間的な感覚を常に持ち、履き心地をなるべくヴィヴィットに感じられるよう、会長はほとんど裸足で過ごしているほどです。働く側にとっても、弊社の魅力のひとつとして商品づくりへの情熱は外せないでしょうね」

評価方法や勤務制度を変え、誰もが長く働ける環境をつくりたい

海外担当から人事に異動されたきっかけはありましたか?

「社長から、直接声を掛けていただいたのがきっかけです。現地採用やマネジメントの経験を活かして欲しいとのことからだと思っています。本当の理由は色々あったのだと思いますが(笑)。異動した当時の人事のメンバーには、すでに人事一筋の社員や社労士がいて専門分野には立ち入れないので、それなら会社としての方向性を示す立場に立とうと考えるようになりました」

人事を打診されたとき、会社からは何を期待されていましたか?

「それまでは形式的なルールなどを大事にするあまり、社員が動きづらくなることもあった。でも現社長は『コンプライアンスも大事だけれど、それだけでは従業員の働き方ややり甲斐が減るのでは?』という考え方。それもあり、私に期待されていたことは、従業員がいかに気持ちよく働けるかを柔軟に考えろということだと思っています。実際、当時はもちろん今でもときどき『前例に捉われすぎてはダメ』と言われます (笑)」

現時点で小泉さんが感じる人事的課題はなんですか?

「弊社は、正社員は約250人で約550人は契約社員やアルバイト。正社員には等級・報酬・評価という3本立ての制度がありますが、契約社員にはアナログの評価表しかなく、目標や会社の意思といったベクトルがきちんと示せていなかった。それをまずはなんとかしたいというのが1点。

もうひとつは、20歳代中~後半の女性スタッフの割合が多いのですが、店舗での平均勤続年数が3年半ほどと短いこと。年齢を考えれば結婚や出産といった理由で退職する人も多いでしょうが、でも会社としてはもっと長く働いてもらい、そのスキルや知識を売上げ・接客に反映してほしい。その二本立てで人事制度改革に取り組んでいる最中です。昇給制度や働き方の幅を広げることで勤続年数が増え、これまでの経験やスキルを生かし続けてもらえるのであれば、制度改革による一時的なコストアップ以上の利益も見込めますから」

契約社員やアルバイトにまできっちりキャリアプランを提示し、人事制度を考えている会社は少ないのではないでしょうか?

「でも、それをやらないと人手不足解消や働き方改革が進みませんから。政府の働き方改革は“時間と場所に囚われない働き方”と提唱していますが、それは概念的なものであって十分ではありません。弊社が目指す改革とは、従業員が“なぜタビオで働きたいか”をはっきり言えるような、働きやすい環境・カルチャーづくりのことなのです。そのカルチャーのひとつとして、ものづくりへのこだわりがあるというイメージですね」

カルチャーや製品へのこだわりを販売スタッフにも大切にしてほしいということですね。

テクノロジーや新しいモノをトップが自ら取り入れ、改善を図る

人事課題の解決に向けて、テクノロジーなどは活用されていますか?

「社長はテクノロジーや働き方、時代変化のトレンドにも非常に敏感で、それらをどう自社に活かすかを熟慮しています。1年ほど前にカオナビさんを導入したのですが、社長は大絶賛して率先して使っているんですよ。アプリ利用履歴を見てみると、かなりの頻度でアクセスしていますね(笑)」

社長ご自身でこまめに社員をチェックしているということですね。どんな理由でカオナビを導入されたのでしょうか?

「弊社は、社長が『インフルエンザは大丈夫?』などと一般社員に声がけして回るほど距離感は非常に近い。だから、カオナビさんの魅力のひとつである『顔と名前が一致する』という点は、オフィス内ではすでに実現できていたんです。

とはいえ、全国の店長の顔と名前までは覚えきれていない可能性があるので、万全の状態を保ちたいというのが導入理由のひとつでした。社長が店舗巡回する際に『○○さん、元気?お疲れ様!』と声がけしたら、言われた側は嬉しいし感動があると思うんです。タビオは売上至上主義ではないのだな、と実感できるでしょうし」

それは確かに嬉しいですよね。その他にテクノロジーの活用事例はありますか?

「会社全体の動きとしてオムニチャネル化を進めており、スマートレジを2016年に全店へ導入し終えました。小売業としてはかなり早い部類かと思います。社長からは『PCを使わず、スマホやタブレットだけで業務ができるような状態を目指してくれ』と言われています。難しい部分もあるのですが、現在はPCで行っている業務を、スマホやタブレットへの移行準備を進めています。レジやPCがなくなればスペースも広がり、スタッフが動きやすく見栄えもいいですからね」

社長の感度が高いんですね。そして実行スピードが早い。

「早いですね。創業者の商品に対するこだわりや視線は大切にしつつ、社長自身は“従業員満足度”など違う視点から会社メッセージを送りたいという意思を感じるので、それをいかに浸透させるかも人事の役割だと考えています」

人事は働きやすい仕組み作りに集中、採用決定権は店舗運営チームに委ねる

小泉さんが人事として目標にされていることはなんですか?

「従業員全員が『なぜタビオで働くのか』を言えること。もっと給料や条件的に良い会社があっても転職しない理由は、仲間なのか、扱う商品なのか、職場環境なのか、何かしらの魅力やタビオらしさがあるからだと思うんです。それを実現するために、会社が整えるべき制度や仕組みを模索し続けています」

採用の時点でそれらの魅力がきちんと伝われば、より良い人材も集まりそうですよね。

「弊社では店舗スタッフの採用は店舗運営チームにすべて任せているんです。人事が一方的にあてがったような配属だと、人間関係の相性も難しいですから。とは言え東京は人手不足がなかなか解消しないので、人事としても契約社員の雇用形態などをさらに幅広く設けてフォローアップしなければと考えています。

人がいないからレベルを落として採用する、お客様に満足いただけるサービスができない、クレームが来る、人が辞める……といった負のスパイラルに陥るのは避けたいですし、レベルの高いスタッフはキープしたい。小売・サービス業界は皆さん同じ思いを抱えていると思います」

最後に、人事として欲しい人材像や、求めるスキルなどはありますか?

「AIなども発達し、人事の役割はカウンセリング的なところが残るのではないかと。機械的に判断できない部分や、コミュニケーションですね。ですから、ベタかもしれませんが人の話を聞けるように心がけています。たとえ反論があったとしても(笑)、まずはすべて聞く。その上で、答えられることはきちんと答えたい。人事と話したいという人は何かしらのメッセージを送ってきてくれているということなので、そこには真摯に向き合いたいと思います。

そして仕事や会社を楽しんでほしいし、自分もそうありたいです。楽ではないし、タスクもあるけれども苦ではない。従業員が良かった、面白かったと思える制度や環境、評価を実現できたときには、大きなやり甲斐を感じています」

人事なら読むべし! オススメの1冊

ムダな努力はない
著:鍵山 秀三郎
刊:PHP研究所

イエローハット創業者である鍵山氏が、自らの人生の行動指針をまとめた一冊。私自身の座右の銘は“凡事徹底”なのですが、著作にもある言葉一つひとつに感銘を受けました。ふとした時にいつでも手に取り、人間力を高め心を磨けるよう、会社のデスクに常に置いています。

会社概要

社名 タビオ株式会社
設立 1977年(1968年創業)
事業内容 靴下の企画・卸・小売・フランチャイズ、チェーン(靴下屋)の展開、直営店(靴下屋・ショセット・Tabio・TabioMEN)の運営
従業員数 800名
会社HP
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小泉 秀之

タビオ株式会社

有名ホテルに勤務の後、1996年にタビオ株式会社(当時、株式会社ダン)へ入社。同社の海外進出に伴い、ロンドンその他の出店計画や海外店舗の運営管理を担当。2013年より現職に異動し、人事戦略を担当するように。現在は人事制度改革や働き方改革などに取り組んでいる。

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“kaonavi HR Innovators”は、人事/HR領域で活躍するHR領域で活躍するキーパーソンが「人事の未来」を語るWEBメディアです。人々の働き方や人材の価値が急速な変化を迎えている今、人事のキーパーソンとして真摯に課題と向き合う方々に「人事/HRの在り方」、「テクノロジーの活用」などを語っていただくことで、人事担当者が抱える課題を解決に導くヒントをお届けします。