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KDDI株式会社

“人財”育成のための経験の可視化とは?PoCも採り入れたカオナビの活用法

2022.04.19
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社員のデータ分析
  1. 度重なるM&Aで、グループ会社の「CFO人財」が不足
  2. PoC(概念実証)を経ることで、精度の高いシステム検討が可能に
  3. 「人財会議」でカオナビの画面をプロジェクターに投影
  4. 在籍月数と本人希望をマトリクス表示、異動希望のマッチングも簡単
  5. 過去から未来までをカオナビに集約し、異動率100%を実現

au(エーユー)ブランドの下、「通信とライフデザインの融合」を事業戦略に掲げ、主力の携帯電話事業のほか金融やEC、DX支援や地方創生といった幅広い領域でビジネスを展開するKDDI株式会社。人事部主導の人材データベースが全社的に稼働する中、同社経営管理本部ではそれを補完するかたちで独自にカオナビを導入し、「人財」戦略に活用しているといいます。アカウンティング領域でのカオナビを利用した人財育成について、同社経営管理本部DX推進部CoE推進グループでグループリーダーを務め、導入を主導した安本高望(やすもとたかもち)様が語りました。

*本記事は2022年3月3日開催のカオナビ主催セミナーの講演内容を基に構成しています。掲載内容は全てセミナー当日時点の情報となります

度重なるM&Aで、グループ会社の「CFO人財」が不足

――すでにKDDI全社の人材データベースが稼働する中で、それを補完するかたちで部署独自にカオナビを導入することになった経緯を教えてください。

安本様:
当社は2015年ごろからM&Aによる事業拡大を繰り返しており、グループ企業がどんどん増えていました。グループ企業の数だけCFOのポストも増えていき、財務会計を中心とするアカウンティング領域を担う経営管理本部では、出向する「CFO人財」の不足という課題に直面していました。将来的にグループ会社のCFOを担い得る人材という位置付けで、経理・財務等のファイナンシャル領域の社員を「CFO人財」と呼んでいるんですが、求められる資質は単に経理やファイナンスだけではありません。なぜなら、特に規模の小さいグループ会社のCFOは、購買、総務、人事やリスクマネジメントといった領域までカバーすることを求められるケースもあるからです。

一方で、当社のような大企業で働く人材は担う業務の幅が狭くなりがちで、これら専門性の高い業務経験を積む機会が少ない。このままでは、グループ会社の経営を担う人財を育てることができません。バックオフィスから企業成長を後押しできる人財を育成するには、経験を積める環境を構築する必要がありました。

――高い専門性を持つスペシャリストを養成することと、幅広い経験をさせることは相反するようにも見えますが……。

KDDIの経営管理本部には、経理部、資金管理部、経営管理部、DX推進部、IR室という5つの部門があり、それぞれの業務は密接に関連し合うものです。そのため、異動の促進によって相互の業務を理解することでより高い視座で業務を俯瞰し、元来持っている専門分野に対する知見も深まると考えています。

米国のある調査会社リサーチによると、人材育成に必要な要素の70%は経験で、薫陶が20%、研修が10%なのだそうです。要するに、いくら上司が指導したり研修を受けさせたりしても、経験を積まなければ実効性が伴わないのです。しかし、その経験に漫然と時間ばかりをかけてはいられません。そこで、効率的な異動で経験を最大化できる人事ローテーションが必要だと判断しました。

経営管理本部の人財配置の方針は3つに分けられます。1つは、多様な能力やバックグラウンドを持つ人財がライフステージに応じた最適な働き方ができる「流動」を促す、多様な「ロールモデル」。もう1つが、国内外で通用する人財育成に向けたオープンな「キャリアパス」。そして3つめが、30歳未満の社員を中心に成長機会を提供する「若手ローテーション」です。若手に多様な経験と成長機会を提供し、高度なプロ人財に育成するため、アカウンティング領域を希望する30歳未満の社員を対象に、本人希望を確認しながら30歳までに3つの業務、かつ2つ以上の部門を経験させることを目指しています。

――これら3つの方針を実現するために、ツール導入を検討されたのですね。

ええ。経験を最大化できる人事ローテーションの実現のためには、過去の配属履歴に加え、担当した業務、業務月数、キャリアタイプ等の「経験の可視化」が必要です。ただ、全社で導入している人事システムはそうした機能がまだ十分ではありませんでした。そこで、本部独自でのシステム導入を検討することにしたんです。

経営管理本部 DX推進部 CoE推進グループ 安本高望様
経営管理本部 DX推進部 CoE推進グループ 安本高望様

PoC(概念実証)を経ることで、精度の高いシステム検討が可能に

ただ、いきなりシステム選定をしたわけではありません。「システム上で活かしたいデータはどんなものか、具体的に何をしたいのか」を見極めるために、2019年10月から2カ月ほど、ツール導入を前提としたPoC(Proof of Concept:概念実証)、「システム以外は、全て“本番同様”に運用してみる」ということを実施しました

PoCで実施したのは、メンバーの異動先希望やキャリアタイプなどのExcelでの蓄積。そして、それらに基づいた本部社員の配置検討会議「人財会議」のキックオフの2点です。ここで、収集すべきデータの項目、見やすい形式での多様なデータの蓄積、メンバーへのヒアリングの場となる1on1の運用など、システムに求める機能を特定することができました。これを判断基準に、タレントマネジメントツールのコンペを実施しました。

他社ツールと比較検討する中で、カオナビは「経験の可視化」を実現する機能があること、そして、UIとUXに優れ、誰もが直感的に使えることが決め手になりました。ツールは使うべき人にハードルなく使ってもらい、浸透させることが何より重要です。本部ではカオナビの他、さまざまなクラウドツールを導入しており、ITリテラシーは決して低くはない組織ですが、それでも「マニュアルがなくても使えそう」という印象は大きなポイントでした。こうして、2020年2月にカオナビ導入を決定し、データ入力等の準備を実施後、2020年6月に本格運用を開始しました。

DXが叫ばれて久しいものの、デジタル化を示す「D」は手段であり、目的はあくまで「X」、トランスフォーメーション(変革)を実現すること。システム導入自体が目的になってしまって、導入後に「さて、これを使って何をしようか」といった状態になるのはよくある話だと思いますが、PoCの段階で「システムを使って何をしたいか」をはっきりイメージできていたおかげで、導入後はすぐに使い始めることができました。

KDDI経営管理本部における人財管理システム検討、運用までの流れ。PoCで運用方法や必要な情報、システムに求められる機能を具体的に洗い出した上で、システム選定に向けたコンペを実施した
KDDI経営管理本部における人財管理システム検討、運用までの流れ。PoCで運用方法や必要な情報、システムに求められる機能を具体的に洗い出した上で、システム選定に向けたコンペを実施した

「人財会議」でカオナビの画面をプロジェクターに投影

――具体的には、どのようにカオナビを活用されていますか。

活用シーンは3つです。まずは「経験の可視化」。データベース機能「プロファイルブック」に、人事部門の全社データベースにある社員番号や名前、資格、年齢、入社日や配属履歴といった基本データを入力しました。これに加え、経験、PoCの段階で蓄積したデータをカオナビに移行し、基本情報と併せて網羅的に参照できるようにしました。

2点目が「1on1の実施」です。年に2回実施する1on1でヒアリングした本人の希望や状況を、マネージャーが自らのコメントと合わせて評価運用機能「スマートレビュー」に入力し、プロファイルブック上に反映させています。評価に向けた取り組みではありませんが、面談シート作成、コメントの追加といった一連の面談運用機能として活用しています。

3点目は「人財会議の実施」です。データ整備と1on1の実施により充実したデータベースを基に、本部社員の計画的なローテーションを議論する「人財会議」を年2回、開催しています。部長クラス以上で構成される会議において、プロファイルブックは氏名や役職を入力した「基本情報」の直下に1on1で得た情報が表示でき、顔写真も併せて表示されるカオナビがあることで議論がスムーズに進んでいます

「プロファイルブック」では、固定表示の「基本情報」欄の下に収集した情報が表示される
「プロファイルブック」では、固定表示の「基本情報」欄の下に収集した情報が表示される

在籍月数と本人希望をマトリクス表示、異動希望のマッチングも簡単

――「人財会議」では、マトリクス表示機能「シャフルフェイス」も活用されているそうですね。

個別のプロフィールを確認する際はプロファイルブックを参照し、シャッフルフェイスでは異動先や交代要員のマッチングを検討しています。人事異動は、各部署が必要とする人員バランスと多くのメンバーの希望を一度に実現しなければならない難しい作業ですが、縦軸が現所属部門、横軸が希望部門のマトリクスを表示すると、メンバーの希望同士がマッチングするところがひと目で分かります。経理部からDX推進部に異動を希望するAさんと、逆に「DX推進部から経理部」を希望するBさんがいることが分かりやすく可視化されるわけです。

そのほか、横軸をその部門にどれだけ所属しているかを示す「業務月数」にすれば、同じ部署でどれぐらいの期間の勤務を続ける人がどの程度いるかも、ひと目で確認できます。直属のマネージャーであれば、「この人は長くいるな」という認識を感覚的に持っているものですが、データとして可視化されることで、最も長い人でどの程度滞留しているのか、各メンバーが「長い」と感じる業務月数はどれくらいなのかといった感覚も共有が図れて、異動の優先順位をつけやすくなりました。

こうしてさまざまな縦軸・横軸を試しながら、大きなディスプレイに映したシャッフルフェイスを眺めつつ検討を進めます。

――メンバーの業務経験と希望が可視化されることで、一人ひとりのキャリアパスもイメージしやすくなりますね。

その通りです。人財会議はPoCの段階で初回を開催したのですが、Excelベースということでイメージがわきにくく、あまり活発な意見交換ができませんでした。ところが、カオナビを導入してからは、会議が初回とは比較にならないほど盛り上がるようになったんです。

「この人はこんなに長く今の部署にいるのか……」「この人、こんな希望を持っていたの? 意外だね」「次回はこんなデータも見られるようになるといいのでは?」といった驚きや発見、新しい提案などが次々と飛び出して、回を重ねるごとに有益な意見交換と意思決定ができるようになったと実感しています。これはまさにカオナビで最も実現したかったことの一つだったので、期待通りの成果に満足しています。

「シャッフルフェイス」のイメージ。蓄積したデータを基に縦軸・横軸を自由に設定できるほか、異動候補の写真を動かせるシミュレーション機能も搭載
「シャッフルフェイス」のイメージ。蓄積したデータを基に縦軸・横軸を自由に設定できるほか、異動候補の写真を動かせるシミュレーション機能も搭載

過去から未来までをカオナビに集約し、異動率100%を実現

――「若手のローテーション」の実現が目標の一つでしたが、どの程度実現できていますか。

30歳未満の若手社員の異動率100%を実現でき、また、3年以上同一業務に従事していたメンバーについても半数以上の異動を実現できました。過去(経歴や実績)から現在(業務月数等のデータ)、そして未来にありたい姿(異動希望先)まで、ある意味メンバーの“全て”の情報をカオナビに集約できたことで、それを現実にしていく取り組みに集中できるようになったのがありがたいですね。

振り返ると、カオナビの導入から本格運用まで、4カ月程度しかかかりませんでした。PoCの実施もさることながら、導入に時間をかけすぎず、アジャイル的に進めていったことが奏功したのだと思っています。

システムは実際に使ってみないとわからないところは多々あります。オンプレミスと比較し導入や解約が気軽にできるクラウドツールのメリットを生かし、手を動かしながら進化させることを意識しています。実際、現職メンバーに過去に所属していたメンバーを加えた「タレント名鑑」と名付けた人財プールの運用は、カオナビ導入後に走り始めました。これも、「別の部門に異動したあの人は、今どこでどうしているんだろう?」という素朴な疑問を発端に、アイデアを形にしていったものです。

――確かに、カオナビなら新たな項目などを自分たちで作成できますものね。今後、カオナビを活用してどのような人事戦略を実行していきたいとお考えですか。

実は私自身、長年ファイナンスを担っていたところに、突然子会社に出向して総務や人事といった業務にも直面した経緯があります。その時はとても苦労しましたが、その時の経験が今の自分の大きな武器になっていると実感しています。

柔軟な活用が可能なカオナビは、アイデア次第でまだまだ活用の幅が広がる可能性を感じています。効率性を担保しつつ、より多くの社員が、より多くの経験を積めるように、これからもトライアンドエラーを繰り返しながら活用法を模索していきたいと思っています。

設立
1984年6月
資本金
1,418億5,200万円
社員数
47,320人(連結ベース、2021年3月31日時点)
事業内容
電気通信事業
  • ※インタビューの内容は取材時のものになります。

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