20-1

山を下りて、人事の道に 
組織とメンバーの最大幸福を追うトレイルランナー(前編)

HENNGE株式会社
 | Business Administration Division Human Resources Section

川野 貴司さん

Interview

2020.03.19

クラウドサービスを通じ、より便利で働きやすい環境を提案し続けているHENNGE株式会社。より優秀なエンジニアを採用するため英語公用化へと舵を切った同社は、多様性の課題に対し、どのように向き合っているのか。山小屋で働いていたという異色の経歴を持つ川野氏に話を伺った。
(本作は2回にわたってお届けします。後編は4月中旬頃公開予定)

PROFILE

川野 貴司

HENNGE株式会社

大学卒業後、所沢市役所に就職。就職後に登山に魅了され、八ヶ岳の山小屋に転職し約2年間住み込みで働く。その後、人事へとキャリアチェンジし2018年にHENNGE株式会社(当時は株式会社HDE)へ入社、ペイロールチームのリーダーとして業務に携わっている。

地方公務員から山小屋に。
山生活で気付いた“ラポール”の大切さ

川野さんはユニークなご経歴をお持ちとのことで、今日はご自身のことについても色々とお話を伺いたいと思います。川野さんは学生時代、キャリアについてどのように考えてらっしゃいましたか?

「出身は広島なのですが大学入学を機に上京し、学生時代はずっと塾講師のバイトをしていました。その中で、地域の方との繋がりができたり学ぶことも多かったので、自分なりに貢献・恩返しできることがないかと考え、地方公務員(市役所職員)になりました」

そこまで強い思いが生まれたのはなぜでしょう?

「学生時代に過ごしていた場所が、故郷の広島に似ていたからかもしれません。駅前は街が開けているのに、少し行けば里山もある。都市と隣接しているという点も、住む場所としてとてもバランスがいい。私自身もその街が好きでしたし、街に移り住む人が増えてほしいという思いが生まれたんです。また、すでにそこで生活を営んでいる方には、その魅力にもっと気づいてほしいという思いもありました」

そんな思いで入った市役所を辞められ、山好きが高じて山小屋に転職されたとか…?

「はい、登山を始めたのは社会人になってからなのですが…。少し、登山の魅力を語ってもいいですか(笑)?」

もちろんです(笑)。

「新社会人だった私にはどこか満たされない、自分に自信が持ちきれない部分を持ち続けていました。一方、登山はどこかに登ろうと一つの目標を定め、それを達成するというシンプルな過程を楽しむもの。山を登っている間はすごく辛い。辛いけれど、登りきったとき自分に自信がつく。それがどんどん面白くなってきたんです。
次はあの山に登ってみよう、次はあそこに登ってみようと挑戦を重ねるうち、より大きな自信が身についていると実感できました。そうして登山への熱量や思いが高まり、山に没入してみようと思い、市役所を辞める決心をしました。同時にたくさんのことをやるのが得意でなかったもので、両立は難しいなと思ったんです」

山小屋では住み込みで働かれたそうですが、どんなお仕事をされていたのでしょうか。

「主な仕事は接客ですね。朝、6時にお客様に食事を出して部屋の掃除をして、次のお客様を迎えるという繰り返しでした。特徴的なのが、職場の仲間と24時間、寝食をともにしなければならないこと。そのため、良くも悪くも人との距離感を考えて生活する毎日でしたね」

四六時中、仲間と一緒という日々が続くと、それもストレスになるのではないですか。

「はい。やはりストレスを感じないといったら嘘になります。多いときには10人くらいのメンバーと一緒に過ごしていました。ストレスをどう発散させればいいかも自分で考えなくてはいけない。発散させようにも、周りには絶対人がいるという状況で…」

自分とも向き合わなくてはいけないし、他人とも向き合わざるを得ない。濃密な関係性ですね。

「はい。その中で身につけたのが“ラポール”、率直に意見を言うことの大切さです。遠回しに言うとか、言わずに我慢するのは、大きな不協和が生まれると実感しました」

率直に言うという行為は、ベースに信頼がないと言葉の受け止め方も難しいですよね。なにか工夫したことはありますか?

「シンプルですが、まずは自分をさらけ出すこと。とくに山小屋は、生活と仕事の場が一緒ですから、いい意味で対人リスクを取るという努力をすごくしていました」

山小屋では何年ほど働いていらっしゃったのですか?

「約2年です」

その間、オフシーズンは山を下りてらしたんですか?

「私が働いていた山小屋はシーズンオフがなかったので、そこがまた切り替えのできない難しさですね。月1回、日曜日の掃除が終わったら山を下りて休暇に入り、次の金曜日に山小屋に上がってまた働くというサイクルでした」

山への思いが明確化し
人事へとキャリアチェンジ

山を下りるという決断をされたのは、何かきっかけがあったのでしょうか?

「常に山と関わりたいという思いで働いていたので、そこで過ごす時間は幸せでした。でも山小屋で働いたことによって、私にとって山は働く場ではなく、挑戦する場なのだと明確になったんです。ずっと山にいたいわけではなく、“山に挑戦するための準備期間があってそれに挑む”というのが、私の山に対する関わり方なんだな、と」

山小屋で働くことによって、ご自身の考えがしっかり定義できたんですね。そこから、人事へとキャリアチェンジされたのはなぜですか?

「もともと学生時代、教師を始めとする大人の教育、組織開発などを専門に研究していたので、それらに関連する業務を民間でできないかと考えました。
また、公務員のときから山で働いたときも含めて、人への関心は常にありましたので、それらをつなげ、飛び込んでみようと思ったのが人事でした。そして未経験ながら採用されたのが、前社だったのです」

実際にはじめて人事を経験してみて、いかがでしたか?

「驚きはたくさんありましたね。人事になるまでは、自分が働いていた背景に、労働基準法をはじめ安全衛生法や雇用保険などさまざまな法律があったことに気付いていませんでした。ですので、まずは一社員の立場では意識したことがない人事の法律、労務などを全般的にマスターすることを目標にしました」

なるほど、そこから現在のHENNGEさんに入社されたのは…?

「2018年5月です」

転職を考えられた際、会社の選択基準はどのように考えられましたか。

「前社での経験で、人事に対する自分なりの想いが生まれました。自分が気付いた制度や規則に対する『こうしたらいいな』という点をフラットに提案できる会社がよかった。変化や提案を受け入れ、積極的に良しとしてくれるカルチャーは大事だと考えていました」

カルチャーを重視されたんですね。ITがいいとか、業種に対するこだわりはなかったんですか?

「正直ありませんでした。ただ、HENNGEを知ったとき、テクノロジーを駆使して企業の課題解決をするという事業内容に興味がわきました」

会社のカルチャーと事業、両方に魅力を感じられたのですね。

「ええ、事業を遂行するにあたって、自分たちがまずテクノロジーを愛するという部分は魅力的でした。前社で労務に携わっているとき、人事というのは非常にペーパーワークが多くて非効率的だなと疑問が湧いたんです。
HENNGEで働けば、それらをテクノロジーで解決できるのでは、HRテックを活用した業務ができるのではという、自分なりのHR像がイメージできたんです」

労務がアナログなのは“仕組み“のせい?
コツコツ進めるデジタライゼーション

ご自身のキャリアと、トライしてみたいこと両方がフィットして入社されたとのことでしたが、社員や経営の方と接してみて、カルチャーを感じるシーンはありましたか?

「入社早々に言われたのが『自分から取りに行きなさい』ということ。マネージャーなどに相談したければカレンダーに自由に予定を入力していいと。なにか思うことがあるなら、どんどん自分から発信・提案していいと言われましたし、逆に言えば、それを求められました。
労務はどうしてもルーティンで回す業務が多いですが、『前任者がやっていたから』はご法度。それに対してどう思うのか、なぜそうやっているのか、もっとどうしたらいいのか、“考えて行動する”というのは日常的に言われましたし、自分からも言うようになりました」

一つひとつに対してきちんと向き合われる姿勢、カルチャーが垣間見えます。前社と比べ、人事業務のテクノロジー化もきっと進んでいたんでしょうね。

「それが実は、会社自体はSlackやGoogleドライブなどのテクノロジーをフル活用しているのに、ペイロールは思いの外、紙ベースだったんです。その点は率直にショックを受けました(笑)」

なるほど、そこは会社の問題というよりも仕組みの問題だったのでしょうか。

「ええ、仕組みの問題です。労務は紙ベースで進める習慣の世界だったのだ、と改めて気付かされました。これはいかんな、と」

そこを解決できる力のある会社だと思って入社したのに……というようなギャップにはどう対応されたのですか?

「はい。結婚や出産など、社員の状況に変化があったときに、紙で提出してもらっていた仕組みはすぐやめました。現在は休暇申請などもGoogleフォームを活用してますし、勤怠を締めるアラートもSlack上でアナウンスするのはもちろん、チームスピリットではbotを活用して自動的にアラートを飛ばしています」

ワークフローを電子化し、リマインドをbot化し…とコツコツ進められているんですね。

「“デジタライゼーション”というキーワードは大切にしています」

それまでは業務が紙ベースで進むことに不満はなかったのでしょうか?

「労務が長い経験者にとっては、逆に紙文化がスタンダートカルチャーなので良くも悪くも違和感がなかったように思います。そのせいか、申請に印鑑やサインが不要だと危ないのではないかなどの意見もありました。なので、当初は紙ベースを変えようと提案しても通らない事柄も多かったです。
でも会社のスタンスは“変化とチャレンジ”なので、変化しないものや数ヶ月前に提案していた事柄が変わらないことを良しとしないカルチャー。我々は基本的に性善説に立って、クラウドやGoogleフォームで申請しても証跡が残るから大丈夫、失敗したらやり直してみよう、と地道に進めるようにしました」

カルチャーに基づいて、根気強く説明しながら進められたのですね。

【後編へ続きます】

人事なら読むべし! オススメの1冊

エンジニアリング組織論への招待
~不確実性に向き合う思考と組織のリファクタリング~
著:広木 大地
刊:技術評論社

エンジニアリングに限らず、メンタリングや開発のアジャイル組織づくりについて、具体的な方法論が提示されています。チームマネジメントなどがうまく行かないときに読むと、ヒントがたくさん散らばっていて非常に役立ちます。今も何か困ったときは辞書のように開いています。認知の歪みを問われ、自分と向き合わなければなりませんが、薬のように効く一冊です。

会社概要

社名 HENNGE株式会社
設立 1996年
事業内容 SaaS認証基盤、クラウドサービスの開発運用
従業員数 158名(2019年12月末日現在)
会社HP
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

20-1

PROFILE

川野 貴司

HENNGE株式会社

大学卒業後、所沢市役所に就職。就職後に登山に魅了され、八ヶ岳の山小屋に転職し約2年間住み込みで働く。その後、人事へとキャリアチェンジし2018年にHENNGE株式会社(当時は株式会社HDE)へ入社、ペイロールチームのリーダーとして業務に携わっている。

ABOUT

“kaonavi HR Innovators”は、人事/HR領域で活躍するHR領域で活躍するキーパーソンが「人事の未来」を語るWEBメディアです。人々の働き方や人材の価値が急速な変化を迎えている今、人事のキーパーソンとして真摯に課題と向き合う方々に「人事/HRの在り方」、「テクノロジーの活用」などを語っていただくことで、人事担当者が抱える課題を解決に導くヒントをお届けします。