タレントマネジメントにおける人材育成とは? その具体的方法や企業の成功事例まとめ

近年、人事・人材の分野でタレントマネジメントという言葉を耳にするようになりました。タレントマネジメントとは、人材の調達や育成といった仕組みや取組のことで、1990年代のアメリカで提唱され始めたメソッドです。

タレントマネジメントとは? 意味、目的と実践方法、システム選び
人事、人材の分野で、ここ数年の間によく聞かれるようになった「タレントマネジメント」。アメリカで生まれた考え方で、日本の企業でも注目されていますが、「どういった取り組みなのか」についてはよくわらからない...

タレントマネジメントとは一体何でしょう。ここではタレントマネジメントの具体的な目的や手法、人材育成の手順や企業事例などを見ていきます。

1.タレントマネジメントの目的

タレントマネジメントの目的は、売上・利益を上げる、事業を拡大するといった企業全体の経営目標を、人事戦略の視点から実現していくこと

最終目的達成のため、タレントマネジメントには以下4つの中間目的があります。

  1. 人材の調達
  2. 人材の育成
  3. 適材適所による成果の最大化
  4. 人材の定着

タレントマネジメントで人材育成が重要な理由

タレントマネジメントの最大の目的である経営目標の実現に向けて、必要な人材の確保が必要となります。

人材を確保する方法は2つ。すでに必要なスキルや経験を持った人材を組織外から採用してくるか、組織内の人材の経験を積ませたり教育を施したりすることで必要なスキルを身につけてもらうかです。

高齢化、労働力人口の減少が叫ばれる昨今、すでに欲しいスキルや経験を持っている人の採用難易度は年々上がっています。そのため、組織内の人材を育成する方法が重要視されつつあるのです。

タレントマネジメントにおける最大の目的を忘れないようにしましょう。目的を見失うと「タレントマネジメントをするためにタレントマネジメントをする」といった手段の目的化が起こりがちです

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2.タレントマネジメントにおける人材育成の手法の例

現場単位では具体的にどのような人材育成を行えばいいのでしょうか。ここでは4つの手法例をご紹介します。

  1. ストレッチ・アサインメント
  2. ジョブローテーション
  3. OJT
  4. 能力開発研修

①ストレッチアサインメント

日本語で修羅場とも訳されるのが「ストレッチアサインメント」と呼ばれる人材育成法。これはストレッチ(背伸び)しなければならないような、その人の今の力量を超えるような仕事を与えることで当人の劇的な成長を促すという方法です。

「海外で仕事がしたい」と希望する中堅営業マンをいきなりアメリカ支社立ち上げ責任者のポストに就けるなど、一見むちゃ振りとも捉えられるような考え方です。

自身の成長を振り返ったとき、チャレンジングな仕事をした経験が自分を成長させてくれた、と感じるビジネスパーソンも多いのではないでしょうか。

②ジョブローテーション

さまざまな経験を積ませ、ゼネラリストとして幅広い経験、スキルを身につけさせたい場合、ジョブローテーションと呼ばれる手段が有効です。

短くて半年、長ければ数年のスパンで部署や職務を変更することで従業員のスキルアップや知識の充実、お互いの仕事をカバーできる体制や組織風土を生み出せます。またジョブローテーション制度自体が就職活動におけるPRとなる場合も。

③OJT

多くの企業で見られるのが「OJT(On the Job Training)」と呼ばれる方法です。これは現場の上司や先輩が指導役となり、各職場での実務経験を通して業務遂行に必要な知識や能力、技術などを身に付けてもらう方法のこと。

指導する人のスキルに依存されやすくなる半面、柔軟性をもって臨機応変に育成できるといった側面もあります。またOJT担当になった人自身が成長する効果も見込める制度です。

④能力開発研修

コーチング研修や問題解決力向上研修、リーダーシップ研修などバラエティ豊かな研修コースを受講させて、とで社員のスキルアップを図ることも有効です。

目標管理と人事考課、後継者計画やキャリア開発など、目的や対象となる社員ごとに研修制度を設ければ、タレントマネジメントの最終目標に対して多角的に取り組めます。

人材育成では、会社の雰囲気や既存社員のスキル、規模や時代背景などそれぞれの状況に応じて、適切な手段を講じましょう

3.タレントマネジメントにおける人材育成の手順

続いて、タレントマネジメントにおける人材育成の手順について見ていきましょう。タレントマネジメントにはいくつかのステップがあります。

育成計画書の作成

前提として現状の分析は欠かせません。人材情報を集約し可視化することで会社の現状が見えてきます。そこで初めて対策すべき課題に対する育成計画書を作成するのです。

育成計画書は集約した人材データをもとに抽出した「タレントプール」ごとに立てるとよいでしょう。計画書は下記3つの要素で構成します。

  1. 社員がこういう状況になったら経営目標が実現できる、という育成の目的
  2. いつまでにその状態を構築するかといった期間
  3. そのための具体的な打ち手

人材の配置

タレントマネジメントの心臓部にあたる育成計画書の作成が完了したら、計画に応じた人員配置を行います。経営戦略と人事戦略の紐づけを意識してもらえるような採用、配置ができればタレントマネジメントのさらなる効果も期待できます。

もちろん、運用中に育成計画書を修正する場合も考えられます。ある程度精度を保ったまま実行できるよう、綿密に計画書を作成しておくとよいでしょう。

人事評価・レビュー

育成計画書を作成し、適切に人材を配置すれば終わりではありません。採用や配置転換などで職場が一新した後も定期的な人事評価を行うのです。

企業業績と個々の貢献度の照合だけでなく、キャリアの志向や仕事上での考えなど、きめ細かに確認しておくとよいでしょう。1on1やアシミレーションなどをうまく取り入れて、育成計画に対する進捗を管理します。

異動・能力開発など

ときには能力開発のフォローアップやモチベーション向上のための異動を行うことも必要です。業務における成長で能力に不十分なところがあれば、速やかに研修プログラムを実施しましょう。

場合によってはジョブローテーションやストレッチ・アサインメントも実施します。重要なのは「PDCA」と呼ばれるPlan(計画)→Do(実行)→Check(評価)→Action(改善)をやったという雰囲気で終わらせないことです。

タレントマネジメントにおける人材育成には「これをしたら完成」という具体的な到達点はありません。タレントマネジメントはあくまで手段であって、目的ではないのです

4.タレントマネジメントにおける人材育成の企業事例

実際にタレントマネジメントにおける人材育成に取り組んだ企業事例をご紹介します。

事例①GEジャパン

GEジャパンには組織の垣根を超えて個人の能力を見極め、飛躍できる大きなチャンスを与えて育てていくという考え方があります。

高い能力を持った人材に、より大きなチャンスを与えるため、宿泊もできる研修施設と多様な研修プログラムが用意されているのです。

指導者としてのスキル取得を目指すトレーナー研修では、教えることに不慣れな従業員に対して3日間の研修を受けさせています。それによって高いレベルの指導者へと育成することを目指しているのです。

事例②コスモシステム

自社製品の開発・製造から全国各地での移動体通信基地局建設工事まで手掛けるコスモシステムには、人材不足が深刻化する時代において若手をどう一人前に育て上げて活躍してもらうかという課題がありました。

創業以来「若い世代を戦力として育てていけなければこの時代には成長できない」と危機感を抱いていたのです。そこで計画したのが10年スパンで若手社員を育成していく「人財育成プログラム」。

ジョブローテーションによるキャリア形成や、役職者に課される部下の成長レベルによる「育成責任者」の評価項目などを展開・運用しています。

事例③吉野家ホールディングス

吉野家ホールディングスでこれまで一般的に形成されていたキャリアパスは、何年か店長を経験した後にエリアマネジャーに昇格。その中から選ばれた人材が本社の各部門に配属といったケースでした。

最近では若く優秀な人材を抜擢し、早い段階から専門的な知識を学ばせる仕組みに変わりつつあります。

「キャリアオーディション」と呼ばれる公募型社内異動希望制度では、本社部門で人員を必要とする際、全社員を対象に募集・選考を行っています。選抜・育成の範囲を広げることで社員の成長を促しているのです。

タレントマネジメントは特性の把握や埋もれている人材発掘のチャンスにもつながります。社員の成長は結果として経営目標の実現につながっていくのです