2020年施行の派遣法改正とは? ポイントをわかりやすく解説、目的や改正内容について

大企業だけでなく中小企業にとっても重要な経営課題のひとつとなっているのが「働き方改革」。

2019年度版の厚生労働省の定義による「働き方改革」とは、少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少や働く側のニーズの多様化に伴う課題解決のため、さまざまな働き方を選択できる社会の実現を目指す改革のこと。これは派遣業界にとっても他人事ではありません。

この働き方改革の一環として、2020年に派遣法改正が実施されます。

1.派遣法とは?

労働者派遣法、いわゆる派遣法とは、正社員に比べて不安定な雇用状況である派遣社員が弱い立場に追い込まれるのを防ぐ法律です。

派遣社員は勤務日数や曜日など労働形態を柔軟に決められるというメリットがある半面、ボーナスが発生しないため正規雇用に比べて年収が少なく、一定の基準を満たさなければ健康診断を受けられないといったデメリットがあります。

また不足人員に対する期間限定での補充といった側面も否めず、派遣先企業の都合で派遣契約期間が終了となることが多いのも事実です。

そんな中、派遣社員の権利を守り、就業条件や賃金、福利厚生などの認定を目的に制定されたのが「派遣法」です。正式名称は「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣社員の就業条件の整備等に関する法律」といいます。

派遣法は派遣社員を守るための法律です。派遣社員の雇用条件を公正なものに保つため、派遣社員、派遣会社、派遣先など、関係するすべての人がこの法律を理解しておく必要があります

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2.派遣法改正(2020年施行)の概要

派遣社員を不当な環境から守るための派遣法が、2020年に改正されます。

改正の目的「同一労働同一賃金」

改正の目的は「派遣社員の同一労働同一賃金」を実現すること。

法改正の背景には、少子高齢化による労働人口減少への対策として政府が推進する「働き方改革」があります。格差の固定化を回避し、働き方を多様化することで労働人口不足の現状を打破しようという取り組みです。

派遣社員と派遣先の正社員との間に不合理な賃金格差があるままでは「働き方改革」の実現が困難となります。そこで今回の改正に踏み切りました。

いつから施行される?

「同一労働同一賃金」を導入した改正労働者派遣法の施行日は2020年4月1日です。改正に際して中小企業の経過措置(猶予措置)を設けていないため、事業規模にかかわらず一斉に施行されます。

この改正により、企業には「職務内容が同じであれば(同一労働)、雇用形態に関係なく同じ金額の賃金(同一賃金)を支払う」という義務が発生します。

条文の変更箇所、変更内容は?

詳細については、一般社団法人日本人材派遣協会が公開している法律新旧対照条文に下記の通り追記されています(派遣法第26条)。

「7. 労働者派遣の役務の提供を受けようとする者は、第一項の規定(新設)により労働者派遣契約を締結するに当たっては、あらかじめ、派遣元事業主に対し、厚生労働省令で定めるところにより、当該労働者派遣に係る派遣社員が従事する業務ごとに、比較対象労働者の賃金その他の待遇に関する情報その他の厚生労働省令で定める情報を提供しなければならない。」

「働き方改革」に伴う派遣法の改正。2020年の改正は企業の配慮・努力義務ではなく必須義務になります

3.改正内容❶「派遣社員の賃金決定方法の厳格化」

2020年の改正において、派遣社員の「同一労働同一賃金」を確保するため、厳格な賃金の決め方が定められました。派遣会社は次のいずれかの方法によって派遣社員の賃金を確保することが義務化されます。

  1. 派遣先均等・均衡方式:派遣先の通常労働者との均等・均衡待遇
  2. 労使協定方式:一定の要件を満たす労使協定による待遇

賃金などの待遇は基本、労使の話し合いで決定しますが、賃金制度の決まり方にさまざまな要素が組み合わされているのが実情です。このため待遇体系全体を確認し、派遣社員を含む労使で共有することが肝要でしょう。

①派遣先均等・均衡方式

「派遣先均等・均衡方式」とは、派遣先で同じ(または同様の)職務に就いている従業員の賃金とのバランスを考慮して、派遣社員の賃金を決定する方式です。

実際のところ、派遣元事業主は派遣先事業主が従業員にいくらの賃金を支払っているのかについて知り得ない立場にあります。

そこで派遣先事業主に対して、従業員の賃金に関する情報を派遣元事業主に提供するよう義務付けることとしました。その情報により均等・均衡の取れた派遣社員の賃金を決定できるのがこの方式です。

②労使協定方式

「派遣先均等・均衡方式」に対して派遣先労働者の賃金とのバランスを考慮せず、派遣会社と派遣社員間の労使協定で賃金を決めるのが「労使協定方式」です。

この「労使協定方式」は派遣会社とその労働者の過半数代表者(または過半数労働組合)との間で締結されます。

ここで重要なのが、派遣社員賃金の決定方法を協定する際には「一般の労働者の平均的な賃金と比較して同等以上の賃金となるようにしなければならない」ということです。

ここでいう「一般の労働者の平均的な賃金」とは、派遣先の事業所地域で同程度の能力・経験を有する人が、同種の業務に従事する際の平均的な賃金の額を指します。

つまり「一般的な労働者の平均的な賃金」の額には職種や能力、経験や地域などさまざまな特性を加味して決定する必要があるのです。

また労使協定が適切な内容で定められていない場合や労使協定で定めた事項を遵守していない場合にはこの方式は適用されず、「派遣先均等・均衡方式」が適用されます。

「派遣先均等・均衡方式」と「労使協定方式」、どちらにも一長一短があるためそれぞれの特徴をよく理解しておく必要があります

4.改正内容❷「派遣先から派遣会社への情報提供の義務付け」

今回の改正により、派遣先は派遣会社と労働者派遣契約を締結する際、派遣会社に対して「賃金等に関する情報を提供する義務」を負うことが新たに定められました。

派遣会社が「派遣先均等・均衡方式」を採用した場合、派遣先からその従業員の賃金等に関する情報を提供してもらわないと均等・均衡の取れた賃金を決めることができないためです。

ここで提供する義務がある「賃金等に関する情報」とは、あくまで派遣社員と同じ内容の仕事に就いている従業員(比較対象労働者)の賃金などに関する情報のこと。派遣先で働くすべての従業員の情報ではありません。

そして派遣会社は、派遣先から必要な情報の提供がないときは労働者派遣契約を締結してはならないことも新たに定められました。つまり派遣先も派遣会社から情報提供の求めがあればこれに応じない限り、労働者派遣契約を締結できません。

また派遣先で比較対象労働者の待遇について変更があった場合も、遅滞なく派遣会社に変更の内容に関する情報を提供しなければなりません。

派遣先は派遣会社から情報提供の求めがあれば、これに応じない限り労働者派遣契約を締結できないため、やりとりには注意が必要です

5.改正内容❸「派遣会社から派遣社員への説明義務付け」

派遣先から派遣会社だけでなく、派遣会社から派遣社員への情報提供も義務付けられます。

派遣社員を雇い入れる際および派遣する際の説明義務

派遣会社は雇い入れ時と派遣時、派遣社員にあらかじめ次の事項を説明しなければなりません。

  • 派遣先均等・均衡方式によりどのような措置を講ずるか
  • 労使協定方式によりどのような措置を講ずるか
  • 職務の内容、職務の成果、意欲、能力または経験、その他の就業の実態に関する事項を勘案してどのように賃金を決定するか

これは派遣社員が不合理な待遇差を感じることのないよう、派遣社員への待遇に関する説明義務を強化したものです。また、雇い入れ時には下記項目も明示する必要があります。

  • 昇給の有無
  • 退職手当の有無
  • 賞与の有無
  • 労使協定の対象となる派遣社員であるか否か(対象である場合には、労使協定の有効期間の終期)
  • 派遣社員から申出を受けた苦情の処理に関する事項

派遣社員から求められた際の説明義務

派遣会社は派遣社員からの求めがあった際にも派遣社員と比較対象労働者との待遇相違の内容および理由などについて説明する必要があります。

「派遣先均等・均衡方式」の場合、下記2点を説明します。

  1. 派遣社員および比較対象労働者の待遇のそれぞれを決定するにあたって考慮した事項の相違の有無
  2. 「派遣社員及び比較対象労働者の待遇の個別具体的な内容」または「派遣社員及び比較対象労働者の待遇の実施基準」

「労使協定方式」の場合は下記の内容に基づき、決定されていることについて説明しなければなりません。

  1. 派遣社員が従事する業務と同種の業務に従事する一般労働者の平均的な賃金の額と同等以上であるものとして労使協定に定めたもの
  2. 労使協定に定めた公正な評価

いずれも、派遣会社は派遣社員が説明を求めたことを理由として、解雇またはその他不利益な取り扱いをしてはいけません。

派遣社員がその内容を理解できるよう、資料を活用しながら口頭で説明することが基本となります

6.派遣法改正の歴史

派遣社員を守るための派遣法は、時代ごとの働き方に合わせて改正が重ねられてきました。

1986年 労働者派遣法施行

1986年に労働者派遣法が施行されるまでは人材派遣そのものが法律で正式に認可されておらず、主に業務請負という形で行われていました。正式に労働者派遣における派遣元、派遣先および派遣社員の三者間の関係構造が明文化されたのがこの時の労働者派遣法です。

制定時に適用対象業務として定められていたのはソフトウェア開発や事務用機器操作、通訳・翻訳・速記を含む全13業務(同年16業務に変更)。

日本的雇用慣行の維持を目的に、常用代替の少ない業務を一時的に外部から労働者を調達する手段として想定していました。また派遣先企業の社員の雇用を代替しないよう、派遣社員の業務を一部の職種や一定の期間に制限することを意図していたのです。

1996年改正 派遣対象業務の拡大

1996年、無許可事業主からの派遣受け入れなどに対する派遣先への勧告、公表が制度化されるとともに対象業務が16業務から26業務へ拡大されました。

放送番組等における大・小道具やセールスエンジニア営業、化学に関する知識・応用技術を用いての研究開発やOAインストラクションなど、正社員に代替できない専門性の高い業務が中心です。

1999年改正 派遣対象業務の一部自由化

1999年には適用対象業務が一部を除いて原則自由化となります。それまで原則禁止だったものが一部禁止となり、いわゆるポジティブリスト方式からネガティブリスト方式に改正されました。26業務以外でも派遣が可能になったのはこの時からです。

ただし既存の26業務については3年、新たな対象業務(自由化業務)については最長1年の期間制限も課されます。また労働者派遣制度を臨時的、また一時的な労働力の需給調整に関する対策として位置付けられることになりました。

抵触日の事前通知や自由化業務に関する雇い入れ努力義務について創設されたのもこの改正です。

2000年改正 紹介予定派遣の解禁

2000年、派遣先に直接雇用されることを前提とした「予定紹介派遣」が解禁されました。

それまでは労働者派遣事業と職業紹介事業を兼業する際の許可要件において、職業紹介をする手段として労働者派遣を行ってはならないと厳しく定めていた中、職業安定法の許可基準改正によってこれが許容されたのです。

これにより派遣社員は一定期間派遣社員として就業し、期間終了後に派遣先と派遣社員が合意すれば、直接雇用(正社員、契約社員)に転換できるようになりました。

2004年改正 派遣期間制限の緩和

2004年になると、26業種の派遣期間制度が3年から無制限に、またそれ以外の業種の派遣期間制度が1年から3年にそれぞれ緩和されました。

これは厳しい雇用失業情勢や働き方の多様化などに対応するための改正です。また企業の経営戦略として、アウトソーシングを多く採り入れるようになっていた背景も考慮されています。

2006年改正 医療関係業務の一部で派遣解禁

これまで派遣が禁止されていた病院・診療所での医療関係業務の一部(紹介予定派遣は可能)で派遣が解禁となったのは、2006年のことです。

医師の確保が困難な離島や過疎地域などで起きている医師不足の解消、医療従事者の仕事と家庭の両立支援の観点から本改正に至ります。

2007年改正 製造派遣の派遣期間制限緩和

2004年に解禁された製造業務への人材派遣は、最長1年間という派遣期間の制限がありました。これを現場のニーズから最長3年と延長したのが2007年の改正です。派遣社員の衛生や労働保険などへの配慮を規定したのもこの時の改正です。

2012年改正 派遣社員の権利保護が目的に

2012年、これまでの派遣法が大きく改正。それまでの規制緩和から一転し、初めて規制を強化する流れに転換されたのです。

日雇い派遣の原則廃止

この改正により、31日未満の日雇い派遣が原則禁止となりました。日雇い派遣労働の場合、責任の所在が不明瞭になる上、安定した職に就きにくいです。「派遣切り」が社会問題として注目され、日雇い労働者の雇用の不安定さが問題視されたのもこの頃でした。

ただし31日以上であれば働くことができます。また60歳以上の人や学生、副業として従事する人、主たる生計者でない人も、引き続き日雇い派遣で働くことができます。

グループ内派遣の8割規制

人件費の削減などを目的に大手企業が人材派遣会社を子会社として設立し、親会社およびそのグループ企業各社に労働者派遣を行う「グループ内派遣」が規制されたのも本改正によるものです。

それまでは何をもってグループ内派遣(専ら派遣)と見なすかという基準が曖昧だったため、多くの企業で広くグループ派遣のメリットを享受している実態が浮き彫りになりました。

本改正により、派遣会社がグループ会社に派遣する場合は派遣割合が全体の8割以下になるよう抑えることが義務付けられ、派遣業界全体の再編が進められました(60歳以上の定年退職者は例外)。

離職後1年以内の労働者の派遣禁止

また事業規制の強化により、派遣会社が離職した労働者を離職後1年以内に元の派遣先に派遣することを禁止しました。同じ労働者を雇用形態を変えて派遣として雇うことで、賃金を値下げする行為を禁止するためです。

これには派遣先企業の社員との賃金、教育訓練や福利厚生など、均衡に向けた配慮が求められたことが背景に挙げられます。

派遣料金の情報公開を義務化

同時に派遣会社には、派遣料金と派遣賃金の差額(マージン)などの情報公開も義務付けられました。派遣会社はホームページ上などで派遣先企業から派遣会社へ支払われる金額と派遣会社のマージン率、教育訓練費といった派遣料金情報を公開する義務があります。

これは2009年、いわゆるリーマンショック後の雇用情勢の急激な悪化に伴い、派遣社員の保護が見直されたためです。また派遣会社は、派遣社員と雇用契約を結ぶ前に賃金や待遇について説明することも必須となりました。

2015年改正 雇用安定化措置・キャリアアップ措置の追加

2015年に行われた派遣法改正では雇用安定やキャリアアップ措置など派遣社員にとって有益な情報や権利が盛り込まれました。

労働者派遣事業の完全許可制化

それまで届出制だった特定労働者派遣事業と許可制だった一般労働者派遣事業の区別が廃止され、すべての労働者派遣事業が派遣事業の健全化を目指す「許可制」となりました。許可要件はキャリア形成支援制度を持つことです。

これにより派遣先は法令遵守の健全な派遣会社の中から派遣社員を受け入れられるように、派遣社員はすべての派遣会社でキャリア形成支援が受けられるようになりました。

派遣期間制限を3年間に統一

またこれまでは研究開発や通訳など定められた特定の業務に従事する専門26業務には派遣期間制限がなく、その他の自由化業務には原則1年、最長3年という制限が設けられていましたが、現場で混乱を招く要因となっていたため、これも見直しが行われます。

改正後は業務による期間の区分が一切なくなり、すべての業務で個人単位および事業所単位の期間制限に統一されました。ただし派遣会社から無期雇用されている派遣社員や60歳以上の派遣社員は対象外です。

雇用安定化措置の義務化

本改正に伴い、派遣期間の上限で雇い止めになるケースが多く発生し、雇用継続が保証されないという問題が浮上してきました。それに対応するため派遣会社に求められるのが、以下4つの措置です。

  1. 派遣先への直接雇用の依頼
  2. 新たな派遣先(就業機会)の提供 ※能力、経験等に照らして合理的なものに限る
  3. 派遣社員以外の無期雇用労働者としての雇用機会の確保とその機会の提供
  4. その他雇用の安定を図るための必要な措置(紹介予定派遣等)

3年間派遣される見込みがあるスタッフに対しては義務が、1年以上3年未満の派遣社員に対しては努力義務が課せられることとなりました。

均衡待遇確保への配慮の義務化

また同時に、派遣会社には賃金や教育訓練制度、福利厚生などの待遇面においても派遣社員と派遣先の正社員との間で不合理な待遇差が生じないよう配慮することも義務付けられました。

給食施設や休憩室、更衣室等派遣先労働者が利用している福利厚生施設については派遣社員に対しても利用の機会を与えるよう配慮しなければなりません。

なおここでいう配慮義務とは、派遣先の労働者と同様の取り扱いが困難な場合まで当該取り扱いを求めるものではありません。たとえば、別の時間帯を設定するなどの措置を行うことで、配慮義務を尽くしたと解されます。

派遣会社による教育訓練・キャリアコンサルティングの義務化

派遣会社は派遣社員に対して段階的かつ体系的な教育訓練の実施、また派遣社員から求められればキャリアコンサルティングを実施することも義務付けられました。

派遣社員の充実した生活設計のために必要な相談を受けたり、企業側が積極的に教育訓練計画に基づいたキャリアアップ支援のための機会をつくったりすることが必要とされます。

これにはフルタイムで1年以上の雇用見込みの派遣社員1人に対して毎年約8時間以上の教育訓練の機会を提供するなど、具体的な教育訓練の時期や頻度、時間数が定められています。

派遣元に対して安定雇用を求める色合いが一層濃くなった2015年の改正。正式名称も「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣社員の保護等に関する法律」に改められました

7.2015年の派遣法改正と「2018年問題」

2015年の派遣法改正に伴い、大きく注目されたのが派遣期間規制の見直しによる「3年ルール」です。

多くの企業が2018年前後に雇用契約上の対応を求められることから、企業が大量の雇い止めに踏み切るのではないか、という懸念が「2018年問題」として注目を集めました。

派遣会社は派遣社員を同じ組織(部署)に3年以上継続して派遣できなくなったため、派遣先企業への直接雇用の依頼や無期労働契約の転換、別の派遣先企業を紹介するなどの対応が必要となりました。これに伴い派遣先企業にも雇用契約への対応が求められています。

その際、企業にはコスト増大の可能性が考えられるため、大量の雇い止めが起きる(失業者が出る)のではと懸念されました。これこそが前述した「2018年問題」です。

2018年問題とは? 改正労働契約法と改正派遣法による有期雇用労働者(派遣社員)の問題
いよいよ今年が該当年となりました2018年問題について見ていきます。 労働契約法や派遣法の改正によって、パート・アルバイトや派遣社員などの有期雇用者を抱える企業ではさまざまな準備・対応が求められている...

派遣会社はもちろん派遣社員も「2018年問題」の背景を正しく理解し、理不尽な派遣切りに合わないようにしましょう

8.2015年の派遣法改正と「抵触日」の注意事項

「抵触日」とは派遣社員の受け入れができる期間(3年間)が切れた翌日のこと。起算日は2015年9月30日以降に締結された労働者派遣契約の初日です。

抵触日を迎えると派遣先企業は同一の派遣社員を受け入れることができなくなり、派遣社員も同一の組織で働くことができません

この3年という期間には「3年を超えて派遣社員を受け入れ続けるということは企業が慢性的な人手不足であるということ。それならば派遣社員ではなく派遣先企業で直接雇用して欲しい」という国の意図が込められています。

「事業所単位」の期間制限

2015年9月30日に施行された改正労働者派遣法により、派遣期間制限は業務内容に関係なく「事業所単位」と「個人単位」の2つの概念に分けて考えられることになりました。

「事業所単位」の派遣期間制限とは、派遣先の同一の事業所に対して適用されます。ここでいう事業所とは雇用保険の適用事業所に関する考え方と基本的に同一です。

原則として、同一の事業所で3年を超えて派遣を受け入れることができません。また派遣契約の締結に際して派遣先は派遣元への事業所単位の期間制限抵触日の通知が必要です。

派遣先が事業所単位の派遣期間制限を延長する場合は、過半数労働組合等の意見聴取手続きが必要になります。しかし、派遣受入可能期間が延長されていない場合、抵触日以降に派遣社員を受け入れることができません。

「個人単位」の期間制限

「事業所単位」に対して「個人単位」の派遣期間制限とは、1人の派遣社員を3年以上同一の組織単位(いわゆる「部」や「課」)に受け入れることができないというルールです。

仮に途中で派遣元が変更になった場合でも、同一派遣社員の受入期間として通算されます。また業務内容が変更になった場合も個人単位の期間制限は通算して3年となります。

「事業所単位」「個人単位」どちらの場合も派遣会社に無期雇用されている人、60歳以上の人、終期が明確な有期プロジェクト業務で働く人などには派遣期間制限が適用されません。

また個人単位の派遣期間制限が残っていた場合でも、派遣先企業の派遣可能期間を超えて働くことはできません。事業所単位の派遣期間制限が優先となります。

抵触日を迎えたらどうする?

抵触日を迎えた派遣社員は、その日以降派遣社員という立場では同一組織内で続けて働くことができません。下記のような働き方から自分で選ぶ必要があります。

同じ派遣先の他の部署で就業する:派遣法の期間制限で定められた「同一の組織」とは、課やグループのことを指す。つまり同じ派遣先企業であっても別の部署であれば新たに就業することが可能

派遣先企業において直接雇用として働く:派遣先に3年間の期間満了後も引き続き派遣社員を受け入れる意向がある場合、本人が希望すれば直接雇用として働くことができる

派遣会社の無期労働契約に転換する:派遣会社と無期の雇用契約を結ぶ。有期の雇用契約を繰り返す働き方より雇用状況は安定しますが勤務地や仕事内容などを選びにくいというデメリットも発生する

極端に危惧することはありませんが、自分の身を守るため「抵触日」を知っておくことは重要です。分からない点や自分のキャリアプランで迷う場合は、派遣会社の担当者に相談してみましょう

9.派遣法改正のセミナーの探し方

自分の場合はどれに該当するのか知りたい、さらに詳しく派遣法について学びたい、という方は「派遣法改正のセミナー」を探してみましょう。

地域の商工会議所

地域の商工会議所で派遣法改正に関するセミナー開催や相談受付を行っています。「派遣法改正、セミナー、商工会議所、自分が住んでいる地域」で検索してみましょう。

派遣法改正の内容を現場目線で読み解くセミナーや専門家を招いた相談窓口を設けている場合もあります。下記から近くの商工会議所を探すことも可能です。

参考 商工会議所名簿日本商工会議所

セミナーや相談窓口などでは改正労働者派遣法について正確な情報が得られるとともに、その対応策についても学ぶことができます。

2020年4月に施行される改正労働者派遣法は企業の大小にかかわらずすべての企業が該当します。派遣先、派遣会社、また派遣社員、すべて他人事ではありません。

都道府県労働局

商工会議所だけでなく全国の都道府県労働局でも派遣法改正に関するセミナーの開催や相談受付を行っています。「派遣法改正、労働局、都道府県名」で検索してみましょう。なお、ほとんどの説明会・相談会が事前予約制です。余裕をもって申し込みましょう。

東京労働局

東京労働局では下記ページにて説明会や相談会の告知をしています。東京労働局→ニュース&トピックス→イベント→2019年度とページを進みましょう。

参考 2019年度厚生労働省東京労働局

大阪労働局

大阪労働局では下記ページにて説明会や相談会の告知をしています。大阪労働局→ニュース&トピックス→新着情報・イベント情報とページを進みましょう。

参考 2019年度厚生労働省大阪労働局

自治体の労働相談窓口

商工会議所にも労働局にも行きにくい、もう少しライトに派遣法改正について学びたい、という方には自治体の労働相談窓口を利用する方法もあります。

各都道府県の労働相談機関でも派遣法改正に関するセミナーの開催や相談窓口を設置していますので「労働相談、派遣法改正、探したい自治体」で検索してみてください。

東京都労働相談情報センター

東京都労働相談情報センターではすべてのセミナーが無料で受講できます。インターネットでの受付が終了していても受講できる場合があります。直接、主催の労働相談情報センターに問い合わせてみましょう。

参考 労働セミナーのご案内東京都TOKYO働くネット

大阪府総合労働事務所

大阪府総合労働事務所では「働くこと」「雇うこと」に関するセミナーを定期的に開催しています。働き方改革に関する個別相談会も行っているので、より身近なものとして派遣法改正を学ぶことができるでしょう。

参考 セミナー・イベント情報大阪府

人事労務関連情報サイト

人事労務関連のポータルサイトが掲載しているセミナー情報ページでも、さまざまな企業が主催する派遣法関連セミナーを探すことができます。

「人事労務、派遣法、セミナー」で検索するといろいろなサイトがヒットしますので、行きやすいセミナーや相談会を探してみましょう。

HRpro

人事ポータルサイトHRproでは「アルバイト・パート」や「派遣・業務請負」などジャンルを絞ってセミナーを検索できます。

参考 セミナー検索HRpro

派遣のミカタ

人材派遣総合メディア・派遣のミカタでは派遣社員の視点、派遣先の視点などさまざまな観点から派遣法改正を学ぶことができます。

参考 派遣業界情報 採用派遣のミカタ

各地域の商工会議所や労働局、相談窓口や情報センターなどで派遣法改正のセミナーに参加したり相談したりして、自分の働き方に合った必要な情報を入手することが大切です