上司と部下のコミュニケーションが減っている企業は少なくありません。業務報告はメールで済ませ、上司との飲み会も敬遠される傾向にあります。
そこで注目されているのが、1on1ミーティング。アメリカ、シリコンバレーでは習慣のように実施されており日本の有名企業も取り組み始めています。1on1ミーティングを活用して上司と部下のコミュニケーションを活発にする方法をご紹介しましょう。
目次
1.社内コミュニケーションに課題のある企業とは?
社内のコミュニケーションが取れていない企業には、以下のような特徴があります。
- 安心して任せていた優秀な社員がすぐに辞めてしまう
- 部下がなかなか育たない
- ちょっと厳しくするとすぐメンタルに支障が出る部下がいる
- 言われたことしかやらない部下が多い
- 部下が自ら考えて動かない
- チーム全体に活気がない
社内、チームや組織にこのような課題があるそのほとんどの原因は、上司と部下のコミュニケーション不足にあります。
2.一般的なコミュニケーションと1on1ミーティングの違い
これまで社内や組織で実施されてきた一般的なコミュニケーションは、ビジネスの結果を出すために社員同士が情報交換をしているだけのものでした。
しかし1on1ミーティングは違います。1on1ミーティングとは一社員、一個人に焦点を当てたもの。上司と部下が1対1で行う対話のことなのです。
情報交換のコミュニケーションとは?
これまで日本の企業で行われてきたコミュニケーションは、
- 業績を上げるため
- 数字的な目標を達成するため
- 会社が求める結果を出すため
これらのために、社内で情報交換が行われているだけでした。社員は個人的な話をする機会もなく、人間関係は希薄になる一方です。
具体例
ただ情報交換をしているだけの上司と部下のコミュニケーションを日常によくある1シーンから見ていきましょう。
部下が、ある案件について「競合メーカーが同じサービスをぶつけてきたため今回だけイレギュラー対応したい」と、上司に申し出たとします。すると上司は、この申し出に対して「期待できるメリットがあればいいだろう」と答えました。
どうでしょう。内容は違っていてもこのような個別案件のやりとりは日常的に多いのではないでしょうか。
これは上司と部下のコミュニケーションというよりも、部下から上司への「報告・連絡・相談(ほうれんそう)」に過ぎません。結果を出すための情報交換をしているだけのことです。
個人に焦点を当てた対話とは?
シリコンバレーで日常的に実施されている1on1ミーティングとは、上司と部下が話し合うことで、会話の内容は業務、失敗した経験、悩み、家族のことなどさまざまです。
1対1で対話し、
- 部下との信頼関係づくり
- 部下の不安の解消
- 部下の心身状態の確認
などを行います。
具体例
上司と部下の1対1の1on1ミーティングを実施すると、社員は前向きになり、指示がなくても自ら動き、仕事への意識が変わるといわれています。その具体的な例として、1on1ミーティングを行ったある女性社員の話を紹介しましょう。
「仕事をしていて自分が今どこにいるのか、自分がどこに向かっているのか、自分の立ち位置が整理できずにモヤモヤしていました。そこで1on1ミーティングの場にて、そんな自分の思いと、ずいぶん溜まっていた上司に言いたかったことをすべて話したのです。
とてもすっきりしましたね。最初はこんなことまで言っても大丈夫かな?との不安もありましたが、『今後は自分で思ったことをやってよい』と上司からお墨付きをもらいました。チームにもどんどん自分の意見を言っていきたいと思います。思い返すと今まで上司とそういった話をする場が本当になかったんだなあと思いました」
3.シリコンバレーの企業がコミュニケーションを重要視する理由
上司と部下が1対1で対話するという光景は、今までの日本企業ではほとんど見られませんでした。この1on1ミーティングを古くから取り入れているのが、アメリカ、シリコンバレーに数多く集まっている世界最先端の大手企業です。
なぜ大企業がそのような手法を実施しているのでしょう。その背景には、人種や宗教、価値観や文化などさまざまな違いを持った多くの人たちが集まっているという背景があります。
そうした異なるものを尊重した1対1の対話の重要性は高く、世界中の人が働くシリコンバレーには不可欠な施策だったのです。また外部からの誘いも多い優秀な人材の流出を食い止めるという目的もあります。
Googleの1on1
1on1ミーティングを実施している大企業のひとつ、「Google」の取り組みを紹介しましょう。
Googleは、個人とチームの「OKR」を定めるための「1on1ミーティング」を実践しています。「OKR」とは、「Objective & Key Result(目標と結果)」の略語で、会社とチームと個人が、それぞれ目標と結果を設定します。
Googleでは毎週、上司と部下が30分~1時間の1on1ミーティングを実施しています。上司は、チーム全体の心理的安全性と目的達成を両立するために「OKR」を行うのです。
インテルの1on1
1on1ミーティングは、アメリカ、シリコンバレーの大企業やベンチャー企業が取り入れ、業績がアップしたことで世界が注目し始めました。
しかしもともとの始まりは、世界トップの半導体メーカー「インテル社」が、上司と部下の関係性を維持するために取り入れたことにあるとされているのです。
インテル社が長年実践する1on1ミーティングは、監督者と部下が1対1でミーティングをするというもの。インテル社では、1on1ミーティングを仕事上の関係を維持する重要な方法としており、定例的に実施しています。
4.1on1ミーティングによって上司が得られるメリット
1on1ミーティングを実施することで上司が得るメリットとは何でしょうか。
現場への理解を深めることができる
部下と1対1で話し合うことで、普段の業務をダイレクトに理解できます。日々変化している現場の状況も、部下の声を直接聴くことでリアルタイムに把握できるでしょう。定期的な部下とのコミュニケーションで現場への理解を深められます。
部下の状況を把握することでパフォーマンスアップにつながる
1on1ミーティングでは、日々の業務以外にも、悩み、不安、家庭の事情、健康状態など多岐にわたって対話します。勤務中では分からない部下の一面を見ることもあるでしょう。その結果、より密な信頼関係が生まれるのです。
部下の現状を常に把握することで、個人個人の仕事へのパフォーマンスに対する理解度が高まります。
5.1on1ミーティングによって部下が得られるメリット
次に1on1ミーティングの実施によって部下が得るメリットを説明しましょう。
タイムリーな相談ができるため不安をすぐに解消できる
1on1ミーティングは、週1回、月1回など短期間で定期的に実施されるため、上司と対話する時間が得られます。また1on1ミーティングではそのときどきの悩みや困っている事を相談し、失敗したことなども打ち明けます。
そうした部下の相談に対して上司がアドバイスを行うため、そこから解決策を見出すことができるのです。自分の業務への評価を受けることもあるでしょう。
上司との距離が縮まる
1on1ミーティングを重ねていくことで、上司と部下の距離が縮まり相互の理解が深まります。1on1ミーティング以外の場でも上司とコミュニケーションが取りやすくなるので、業務にトラブルが生じてもすぐに対処してもらえます。